4、遠くに見えるはむーんらいと ページ4
××
なんだか眠れなかった。
隣で安らかな寝息を立てるユウをなるべく起こさぬようにしながらエースは部屋を出て、談話室に向かう。
夜空に照らされた薄暗い窓際に彼女はいた。
長い黒髪に、長いスカート。彼女はグラスを持って遠くを見つめていた。その眼差しは本当に遠く、どこかとおいところを見ていて、見てはいけないものを見てしまったときのような気持ちになる。
「……まだ起きてたんだ……」
「お、おう」
唐突にAが振り向き、エースはビクリと身体を揺らす。「Aこそまだ寝ないのかよ」と何食わぬ顔で近づけば彼女は無言で頷く。
「何見てんの？」
「月」
「ふぅん。面白い？」
「面白くはない」
だよな、と笑ってエースはAの横顔を見つめる。思えば彼女の顔をまじまじと視界に映したのはこれが初めてかもしれない。陰気臭い女。それが第一印象。
「あーあ、あのタルト美味かったなあ……」
「……な、なんのタルトが好きなの？」
「チェリーパイ」
「それタルトじゃないよね」
「Aは？」
「タルト生地そのもの」
「お、おお……なんつーか……うん、ワイルド」
エースの反応が面白かったのか、Aは僅かに、ほんのすこしだけ口許を緩める。それはエースが初めて見た彼女の表情だった。
「じゃあ今度タルトの生地だけ盗み食いしよーぜ」
「反省ゼロだな」
Aは少し笑ってから、ぎこちなくエースに視線を向ける。
「あ、あのさ、私、あんたのこと世界で一番いやなやつだと思ってたけどさ……」
「お前そんなこと思ってたのかよ」
「……二番目くらいに、しといてあげる」
彼女を好きだと言ったデュースの気持ちが今なら分かる、ような気がする。
うっすらと目尻を赤く染めたエースにいつ恋愛頭脳戦が始まっても良いように頭を恋愛脳に切り替えていたAのセンサーが反応する。
(こ、この反応は……もしや……私に惚れてしまったのかな。ふっ……私の可愛さに今更気がつくなんて……お可愛いこと……)
エースが再びAに視線を戻したとき、彼女はニヤニヤしながらエースを見ていた。あ、なんかムカつく。
「オレもお前のこと怪力ゴリラ女だと思ってたけど！」
「てめぇそんなこと思ってたのかよ」
「怪力マウンテンゴリラ女くらいにしといてやるよ！」
「結局ゴリラじゃねえか！！」
それから、彼女の中でエースの呼び名が「やなヤツ」から「やなや2」に昇格したことを、エースは知る由もない。
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柊あんず(プロフ) - ユノンさん» まだそこまで詳しくは言えないですが、現時点で誰よりも特別なのは間違いないです…！(これ以上はチャットになりかねないので失礼します…！) (2022年7月11日 15時) (
レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 柊あんずさん» デュースと夢主人公は恋人になりますか? (2022年7月11日 15時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ユノンさん» ありがとうございます〜！デュースくんとはたくさん絡ませていくのでお楽しみに笑 お気遣いくださり本当にありがとうございます！ (2022年7月11日 13時) (レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 柊あんずさん» 夢主人公とデュースの絡みが見てみたいです (2022年7月11日 12時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 更新はゆっくりでいいですよ (2022年7月11日 8時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
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