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「「……」」
夢前と書かれた名札、笹山と書かれた名札。二つがかけられた部屋の前に、藤内と喜八郎が居た。二人とも私の顔を気まずそうに伺っている。
「呼ばれたのか」
「はい。兵太夫に」
答えたのは藤内だった。震えた声でそう言って、目を逸らす。慣れてはいたが中々堪えるものだ。私は伝七から呼び出された。彦四郎の手を強く握っていたのを覚えている。三治郎と兵太夫の部屋で待っていますと言われて、ここまで来たのだ。
「では私が先に入ろう。二人とも後に続け」
「はあい」
「はい」
戸を開ければ、そこには一年生を両脇に抱えた三好がいた。意地の悪い顔をしている。
「なっ……天女!」
藤内が荒々しい声を出した。彼女は「ヒッヒッヒ」と滅茶苦茶に態とらしい悪人声を出す。
「この二人を返して欲しければゆっくりこちらに近づくがいいさ!」
「「た、たすけてぇ〜」」
兵太夫に関しては世紀末か?レベルで真顔だし伝七は逆にマジ泣きだ。何したんだ三好。伝七は泣き虫だからあんまりからかわないで欲しい。
「っ……!言われずとも!」
藤内が足を踏み出した。危ない!と彼の腕を掴む。ガクンと床が抜け、藤内ともつれるように落ちていく。咄嗟に近くにいた喜八郎の足首を掴むと、彼は「ええっ」と情けない声をあげて一緒に落ちた。
ガタンガタンとカラクリが作動して頭が痛くなる。と、ボン!と音が鳴って顔に熱風がかかった。火傷はしないだろうが、少し熱かった。
ゴロンと三人同時に押し入れから転がり出れば、そこには笑顔の三好と伝七、兵太夫がいた。
「「だーいせいこー!」」
ドッキリ大成功と書かれた札を手に持っている。そして私たちの姿をよく見て、三人は腹がよじれんばかりに笑った。
「仙様もあややも藤内も髪やばっ……」
え、と三人で目を見合わせる。全員の髪が縮れていた。なるほど、さっきの熱風は火薬か……!
「ぷっ」と藤内が吹き出す。つられて喜八郎もケラケラ笑った。なんだかその笑顔が無性に愛おしくて、二人のことをまとめて抱きしめた。
「やっと、笑ってくれたな……。すまなかったお前たち……謝罪が遅れてしまって」
きょとん、と目を見開いた作法委員会のメンバーは、次にむずかゆそうに笑った。兵太夫が伝七を引っ張って近寄ってくる。
「いいんですよ。謝罪が聞けて満足です。ねっ、伝七、浦風先輩?」
そうだな、と笑い合う作法の面々を見て、私はひとりごちた。
「私……空気じゃないか?」
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小桜(プロフ) - ほんっっっとうに面白いです! 夢主ちゃんの言うことに共感しかありません。そうですよね、忍たまキャラはみんな殺戮兵器ですよね、視界に入れただけで失神してしまいそうです。夢主ちゃんってアホだけどアホじゃない(何言ってんだ?)! 続きも楽しみにしてます! (2022年3月28日 19時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
乃花おむ子(プロフ) - ( ・_______・ )くじら!さん» わぁ!ありがとうございます!音読して笑っていただけるの嬉し〜い!!私も音読して笑ってます!(うん?)夢主はこれからもハイスピードで駆け抜けていきます!楽しんでいただけると嬉しいです! (2021年11月23日 15時) (レス) id: 3538425ae0 (このIDを非表示/違反報告)
( ・_______・ )くじら!(プロフ) - とても夢主ちゃんの(いい意味で)アホなところに面白くて笑っています!偶に音読して、さらに笑っています!(笑)お身体大事にして下さい:) (2021年11月12日 12時) (レス) @page26 id: 4f01b1638d (このIDを非表示/違反報告)
乃花おむ子(プロフ) - いちごもんすたーさん» ありがとうございます!ちまちま更新頑張ります! (2021年9月20日 11時) (レス) id: 3538425ae0 (このIDを非表示/違反報告)
いちごもんすたー(プロフ) - 夢主さんのオタク発揮具合がめちゃくちゃ面白いです(笑)更新楽しみにしています!お体にはお気をつけて (2021年9月16日 21時) (レス) id: c5f21f47da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃花おむ子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Omutarosan1/
作成日時:2021年9月15日 16時