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「茶は。」
「無いよ。ココアで我慢してよ。あれもこれも断りやがって。逆に何飲んでんの?」
「ネブラの淹れた紅茶だ。」
す、と何気なくカップを遠ざけたノゼルに呆れた視線を送る。
「私の方が上手く淹れるぞ。貴様のそれでは信用ならん。」
「そーかよ。ちなみに聞くけど、銀翼の団長ってお湯沸かせんの?」
「見くびるな。風呂だって沸かせる。」
「風呂如きでドヤ顔されても…」
あぁ、ダメだ。この男とはどうしても話が脱線する。無理やり話を戻そうとAは口を開いた。
「この間の初任務で星が授与されたの。」
「何の話だ。」
再び眉間に皺を作ったノゼルを無視してAは続ける。何の話かなんて聞かなくても分かるのに、どうしてそんな無駄な質問をしたのだろうと溜息を吐きたくなった。
「"海竜の巣"って魔法も覚えた。あんたも知らん内にノエルは成長して、守られるだけの存在じゃなくなってんの。」
妹を戦場に近付けまいとして選んだ選択は、ノエルを成長させる選択になっていた。母親に似た妹を母親の様に死なせなくないのはAだって分かる。母親に似ていなくとも家族は死んで欲しくない。だが、色々とやり過ぎなのだ。トラウマに近い程の傷を与えた。
時計に目をやれば夕暮れ。外もオレンジ色に染まり始めた。そろそろ団員達が帰ってくる頃だろう。それをノゼルも察したのか無言でソファを立って扉を開ける。そのまま立ち去って行こうとするノゼルの背中にAは見送りがてら声を掛けた。開いた扉に寄りかかりながら口を開く。
「ノエルは家族に対して強い想いがある。憧れなのか何なのか知らないけど。早い内にちゃんと仲直りしときなよ。銀翼の団長もノエルもこんな仕事してんだ。後悔先に立たずってな。」
歩いていた足がふと止まる。振り返りこそしないものの、ノゼルはAの言葉に耳を傾けていた。ヤミから聞いた話だ。ノゼルも詳しく知らないが、家族を失う痛みをAも痛感している仲間であった。
「ノエルはきっと、あれこれ思いつつも簡単に許すだろうよ。だから、その分私がお前らを許さないでいる。」
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マリイ - はなぼーさん» ありがとうございますユウカ様の小説一つも無くてレオポルド、アスタ、ラック、マグナ (ライア)好きだけど1番はユウカ様 FTとブラクロの中で (2022年8月4日 14時) (レス) @page47 id: 70be676ed1 (このIDを非表示/違反報告)
はなぼー(プロフ) - マリイさん» リクエストありがとうございます!作品一つ作るのは難しそうなので、ユウカとのお話をどこかで挟もうと思います! (2022年8月1日 21時) (レス) id: 603a42e081 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - ユウカ・スズキの小説も書いて欲しいです ユウカ好きなのでラミアスケイルの (2022年7月29日 20時) (レス) id: 70be676ed1 (このIDを非表示/違反報告)
はなぼー(プロフ) - ミトさん» コメントありがとうございます!長らく更新出来ていませんでしたが、ちまちまと再開致します! (2022年7月11日 11時) (レス) id: 603a42e081 (このIDを非表示/違反報告)
ミト - ブラクロに再熱して夢小説探してたら面白いの見つけた…続きを楽しみにしてます! (2022年6月11日 1時) (レス) @page39 id: 54bc55279d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなぼー | 作成日時:2022年3月3日 18時