花の運命−さだめ− 【片倉小十郎】 弐

第４５話　制裁 ページ2

あれから数日。
すみれと小十郎はすっかり回復し、いつもの日常に戻った。小十郎曰く、また倒れられたら困るのでこれから畑仕事は半日手伝ってくれればいいと言われたので、すみれは素直に了承した。
午前の畑仕事を終えた後、すみれは城下町で散策兼買い物しに行く事にした。
城を抜けて下っていけば賑やかな城下町。行き交う人々。快活な笑い声。
店内に入りしばらく商品を見ていると、ふと外からざわめきが聞こえる。外に出ると柄の悪い男と怪我をした男の子がいた。
何があったのか近くの町民から話を聞くと、どうやら遊びで前を見なかった男の子を男はわざと避けないでぶつかり怪我をさせたらしい。そんな卑劣な行為を許せなくて、すみれは考えるよりも先に体が勝手に動き男の子を庇うように立った。


「そこのあなた、この子に謝って下さい」

「あん？ なんだてめぇ？」

「あなた、わざと避けないでこの子にぶつかったでしょ。いい大人が恥ずかしくないのですか？」

「ああ？ 避けなかったこのガキが悪いんだろうが。にしても嬢ちゃん、可愛い顔してんなぁ。俺と一緒に楽しい事しねえか？」


ニヤニヤと下卑(げび)た顔で笑う。
これは制裁を加える必要はあるようだ。
すみれは城下に行く前、小十郎から悪い男に絡(から)まれたらの撃退法を教示してくれた事を思い出す。


『いいか、すみれ。もし悪い男に絡まれたら股間(こかん)を当てろ。男はそこに当てられるとイチコロでやられる』


すみれは、男なら誰でも痛いであろう急所を思いっきり蹴(け)った。
男は声にならないほどの悲鳴を上げ、両手で股間を押さえながら体をピクピク震わせて倒れた。
ちょっと可哀想な事したが、すみれは心の中で謝った。


「大丈夫？ 怖かったね。次からは気を付けて遊ぶんだよ」


しゃがみ、男の子の頭に優しく頭を撫でる。


「うん。ありがとう、お姉ちゃん！」


男の子は笑顔で頷き、走っていった。


「て……めぇ……」


地面で蹲(うずくま)っていた男がのろのろと立ち上がり、物凄い形相ですみれを睨みつける。


「この女が！」


刀を抜き、すみれに向けて振り上げろうとしたその時――


「ちょーっと待ったぁぁぁ!!」

第４６話　前田慶次→←第４４話　遠い記憶

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