魔人とわたし。 ページ7
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死者は復讐なんて望まない。
よく安っぽいドラマにはこういう科白が出てくる。しかし、本当にそうなのだろうか。私だったら自分を殺した相手を地獄に行っても恨むし、殺してくれるのなら殺して欲しいと心の底から祈るだろう。まぁ所詮、死んでしまった人間の想いなんて、聞くことは出来ないのだ。
精神病院から出て、今終わりましたと、安吾さんにメールを送った。私の状態を心配してくれた安吾さんが一緒に行くと云ってくれたが、流石にそこまで甘えるわけにもいかないだろうと断った。彼は大人で、仕事があるのだから。
空を見上げる。雲ひとつない、真っ青な空。
両親が殺された日も、綺麗な青空だった。
私はスマホを鞄に入れ、地面に座り込む。
矢張り、私は精神が不安定になってるみたい。
膝に顔を埋め、目を閉じる。瞼に焼き付いて離れない、血だらけで横たわるパパとママ。
このまま死ねたら、どんなに楽なことか。
「そんなに死をお望みですか」
それはどこか薄気味の悪い声だった。
まるで私の心を読んだかのような言葉。
私は顔を上げ、背後を振り向く。
吸血鬼の様に白い肌に、紫水晶の瞳。
「復讐も果たさずに、死を願うのですか」
「……っ……あなたは？」
私の質問に、男は答えず、ただ笑った。
「あなたには武器も武力もありません。
だから、憎き相手を殺したくても殺せない。
えぇ。相手は異能力者。あなた一人では到底敵う相手ではありません」
「……なにが、云いたいの？」
「ぼくが協力して差し上げます」
彼はその血色の悪い、唇を歪ませた。
「すべては、より善き世界の為に」
この日、私は魔人に魅せられ、
復讐の鬼となった。
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