丘の上で2 ページ6
「……友人だ」
太宰さんはぽつりとこぼした。太宰さんは僕の方に歩いてくる。
「私がポートマフィアを辞めて探偵社に入るきっかけを作った存在だよ。彼等がいなければ、私は今もマフィアで人を殺していたかもね」
「えっ……」
すれ違いざまに告げられ、僕は当惑した。真実なのか、偽りなのか。どういう意味なのかまるで見当もつかず、気になって振り向く。僕からは太宰さんの背中しか見えない。僕が何かを云うよりも先に、太宰さんは冗談めかして、
「嘘だよ」
と云った。
「第一、その友人は生きてる。このお墓は、彼の死を偽装する為のものだよ」
「偽装……?」
何の事かと訊くように口にした。
「誰だと思う? 君もよく知っている人物だよ。中ててご覧」
太宰さんは振り返ると悪戯っぽく笑い、人差し指をピンと立てた。
「ええと、ご友人となると……織田さんですか?」
織田さん――織田作之助さん。彼は太宰さんの旧友だ。織田さんも太宰さんと同じくポートマフィアを辞めて探偵社に入ったのだという。
「おっ、正解! それともう一人、私がマフィアを辞めるきっかけを作った存在が居るのだけど――こっちも中ててご覧」
もう一人……?
僕は思考を巡らせる。太宰さんをマフィアから連れ出した存在……。
若しかして、と思い立った。
「Aさん、ですか?」
太宰さんはそれを聞くと満足そうに頷いた。
「如何して解ったんだい?」
太宰さんは歩みを止めた。
「僕もAさんには何度も助けられたから、ですかね。鏡花ちゃんからも、マフィアにいた時にはAさんが気に掛けてくれていたと聞いてます」
僕が答えると、太宰さんは「そうかい」と空を見上げていた。
「そうだ、敦君」
不意に声を掛けられ、僕は短く返事をする。
「はい?」
「国木田君あたりに云われて私を探しに来たのだろう?」
そうだ、本来の目的!
「ええ、大事な会議があるからと」
「――パス」
「ええ?」
太宰さんはそのまま歩き出した。
「ちょっと新しい自'殺法を試したくてね」
「またですか? もう……」
太宰さんはひらひらと手を振りながら歩き去ってしまった。自'殺
太宰さんの砂色の外套がゆらりと風に揺れて小さくなった。
お墓参りでないのなら、太宰さんはなんでこんな所にいたのだろう。
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます! 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー(どの口が) (6月21日 3時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ!?!?ついでに私も泣くよ!?(?)BEASTめっちゃ好きだけど!!作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます! これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公!!いやbeastもいいけど嬉しいですけど!!! 続き楽しみに待ってます頑張ってください! (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます!! イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します!! (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢野秋 | 作成日時:2021年11月1日 2時