降ろす日に ページ44
「悪かったね二人共。そうでないと入社試験の審査にならなかったから」
その言葉に敦君は思い出す。
「若しかして……最初から全部……？」
太宰さんはそれに笑顔で肯定する。
「街は救われた。敵は打倒され、鏡花ちゃんは合格した。不安もあったが巧くいって善かったよ」
太宰さんは私を見ると、ふにゃりと表情を崩した。
*
「――ああでも、一つだけ」
「なんだい？」
「貴方を捕縛した和装の少女――鏡花ちゃんを、頼みます」
「……判った」
*
あの会話だけで全てを察した太宰さんが敵でなくて善かったと本当に思う。ちゃんと和解しといて善かった。
太宰さんのやりきったと云わんばかりの笑みに、つい前世から持ち越した姉心が疼いたが、私は妹だ。それも七歳下の。Ｑちゃんが相手だったらわしゃわしゃとその頭を撫でていたであろうが、残念ながら相手は七歳上の兄だ。
四年前に夢だと勘違いして、少年太宰さん(幻覚)を撫で回した……と思っていたら撫で回していたのは真逆の黒太宰さん本人だったといった事があったのを思い出してしまった。軽く黒歴史である。
「太宰さん」
自身も限界が近いというのに芥川君は会話が終わるのを律儀に待っていたようで、必死に躰を支えているが今にも崩れ落ちそうだった。『羅生門』は細く揺れていた。
「最早邪魔する者は無い。今日こそ……僕の力を」
よろけながらも太宰さんに向かって歩を進める芥川君に、太宰さんは溜息ひとつ。
「如何かな。もう限界だろう？ 組合の長を倒したんだから」
太宰さんは手を芥川君の肩に置いた。『羅生門』が無効化される。
「強くなったね」
芥川君は何かを云おうとしたのか、横に結ばれていた口を少し開いた。そして太宰さんの手が離れると同時に、糸が切れたかのように崩れ落ちた。
私は芥川君が地面に激突しない様に支えた。虎化を解かれた敦君が太宰さんに投げ捨てられた時には出来なかったことだ。敦君、あの時はすまんかった。
「ありゃ」
「お疲れ様、芥川君」
多分聞こえていないだろうが口にする。芥川君を抱えて気付いたが、彼の目の端には薄らと涙が浮かんでいた。それをそっと拭ってやって、私はスマホを取り出す。アドレス帳の「は行」から順に目当ての人物を探し出し、ショートメッセージを送った。
それにしても芥川君、身長の割に軽い。ちゃんと食べさせないとな。
「！」
敦君は向こう側に探偵社の面々を見付けたようで、目を見開いていた。向こう側の皆は、誰もが優しげな眼差しで敦君を見ていた。
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夢秋(プロフ) - 百笑咲夜さん» お恥ずかしながらその事実を全く知りませんでした。二次創作自体グレーなものですので、今後お気をつけて楽しい創作ライフを送ってください！ (2023年1月21日 0時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
百笑咲夜 - 初コメ失礼致します。プリ小説というアプリで活動していた者です。感想じゃなくてすみません。主様の作品とほとんど同じ内容の小説をプリ小説で書いていました。すぐに小説は削除します。大変申し訳ございませんでした。 (2023年1月7日 19時) (レス) id: f1d74042d6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - ユキさん» 応援ありがとうございます！ クトゥルフのSANチェックがアレですからね……そして夢主ちゃん、元々勝手に姉を名乗っています。どこかの十人兄弟の長兄のようになってますw (2021年8月19日 21時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - とても面白いです！SAN値チェックがあったの笑いました。「どけ！！！！私はQちゃんのお姉ちゃんだぞ！！！」が好きですｗｗｗ１D１０/１D１００には驚きました。ラヴ君、恐るべし・・・。頑張って下さい！最新待ってます！ (2021年8月19日 21時) (レス) id: c2037b5d01 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - 夢女子S氏さん» ありがとうございます！！ やったー！！ 頑張ります！ (2021年8月13日 2時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2021年8月7日 20時
