気合いは入らず抜けるだけ ページ35
「名前は呼んでいたさ」
彼はヘラヘラとしながら云うが、
「それは任務の時に第三者に話すために便利上用いただけですよね。でも階級が今のように分かれてからはそれすら使わなくなりましたよね。『太宰準幹部』で全てが済みますからね」
と云ったら一度黙った。
「貴方にとって私の名前は只の識別記号なのですか? そうじゃなきゃプライベートでも『君』とか『彼女』で済ませるわけありませんし」
「……」
「……貴方にとって私は何なの? 私を苦しめたいの? やめてよ。もう厭だよ。私は何の為に居るの? 貴方の道具なの?」
口から言葉が溢れる。呼吸が荒くなる。胸が締め付けられたように痛くなる。視界がぼやけて見えない。
その代わりに見たくないものが見えた。
聞きたくないものが聞こえた。
「馬鹿」「死ね」「クズ」「消えろ」「役立たず」「ゴミ」
と次々浴びせられる罵詈雑言。
「こいつ隣になるぐらいなら死んだ方がマシ」
席替えの時。
「俺の前こいつかよ。こいつの後にバトン触りたくねえ」
体育祭のリレーの順番決めの時。
「ちょっと、触んないでよ! A菌がついたー」
プリント拾った時。
「天国でも見てんのー? 死ねばいいのに」
窓から外見てた時。
「聞こえませーん! もっと大きい声で言ってくださーい!」
発表中に態と騒ぐ男子。
「落とした方が悪いんじゃん」
愛用のペンを盗まれた挙句に壊された時。
今でも耳にこびりついている下品な嗤い声。
私が話し掛けても私が居ないように扱う皆。
いつの間にか広がっている根も葉もない噂。
わたしを見ながらの陰口とクスクスという声。
隠されてゴミ箱に捨てられた上履き。
学校中にマジックペンで書かれた私の名前。
叱るうちに話の論点がズレていき、いつまで経っても過去の過ちを何度も繰り返し言い続ける母。
その内何故怒られているか分からなくなってもひたすら謝罪の言葉を口にする私。
「何が悪かったか言いなさい」
「……分かりません」
その次に来るのは罵声。
その次は自分を責める母の声。
「ママが駄目人間だからこうなっちゃったんだよね、ごめんね。ママがママじゃなきゃ良かったね」
その次はヒステリー。
その次は――私に向けられた包丁。
やめてと叫ぶ私。
怖かった、それしか云えない。
これでも生温いかもしれない。
でも私を追い詰めるには充分だった。
私はフラッシュバックする光景の中只々耳を塞ぎ蹲っていた。
だが、ふと前を見ると誰かの影が見えた。
小さい影だった。
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サングリア - いえのきあさん» 判りました!定期考査頑張って下さい。私も今日から考査です…(´-ω-`) (2018年11月27日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
いえのきあ(プロフ) - サングリアさん» ありがとうございます!今はテストや課題があってなかなか更新できませんが頑張ります!終わりのセラフもテスト終わったらぼちぼち買うので、お待ちくださいませ! (2018年11月26日 22時) (レス) id: 75f23159f6 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 黒の時代…更新頑張って下さい! (2018年11月26日 16時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 長くてすみません…(´-ω-`)出来たら2つ宜しくお願いします!更新頑張って下さい (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - クルル、クローリーなどの上位吸血鬼に気に入られて心配される。吸血鬼にしようとしている。渚は四鎌童子、アシェラに出会い、話をしたことがある。四鎌童子と一緒に3年間行動した。渚はその事を覚えていない。かなり謎に包まれた渚の過去 (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢秋 | 作成日時:2018年2月10日 2時