_ 備考 〜 ページ5
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「はぁあ!なぁっして最近店に来るのが御前ばっかりなのさ。だから何度も言ってんだろぉ、あーしが求めてやまないのは欲に塗れた人間君だっつんだよ。御前みてぇなせーじんくんし野郎はお呼びしてねぇのさ。さっさとけぇれ馬面」
「そぉだよぉ……そう、これだ、これ!これ、これ、これなのさぁ!!!!あーしがずぅっと待ってたのは、これなんだよ…………人間が、今よりもっと、もっと、もっともっともぉっと欲に溺れて、救いようがない位のバケモノになっていくこの姿!!!!あぁ、今さいっこーにゾクゾクしてるのさ!!さあ、次はどうする?俺に牙を剥くのかい?それとも街で愚衆を散らして暴れ回るのかい?!ははっ、ははははは!!!!!!……ふ……っく、う"……楽しくって吐きそうだ、なぁんて……こんなの、初めてなのさ」
【備考】物心ついた時には既に、彼は親の元を離れていた。
美徳の幼児を探し、そこらのマフィアに高値で売る。そんな仕事をしていた輩に、偶然攫われてしまったのだ。
その男に、彼は7歳まで育てられた。事あるごとに能力者の話を聞かされ、時には可笑しな施設で可笑しな機器を使った検査をされることもあった。
しかし、結局その場で彼の力が目覚めることはなかった。7つになっても美徳にならなかったら捨てる、とでも決められていたのか……彼はある日突然ぽん、と軽々街へ置き去りにされてしまった。
「悪く思うなよ。人間なんて皆、私利私欲の為に動くもんなのさ」
それが最後に聞いた、男の言葉であった。
その男に執着していた訳でもなかった為、その場で日が暮れるまで佇んでいた彼。
そこで現れたのが、次の彼の引き取り手だった。
その男は写真家で、毎日毎日彼を写真のモデルとして使っていた。その端麗な顔立ちや華奢な体型がその男のイメージにぴったりだったらしい。
……しかし、その生活は約二年程で終わりを告げた。
彼が男の云うことを聞かなくなったのだ。
自由の少ないこの男との暮らしにようやっと痺れを切らしたらしく、そのまま家から脱走。行方を上手くくらまして、彼はその街を後にした。
「……結局、ガキはガキなのか。あぁ、そうかい」
この男の呆れたような別れ際の言葉は、今の彼の記憶にはあまり残っていないようだ。
次の引き取り手は、彼が少し歩いた先で出会った若い女であった。
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