第088話・冬こもり、春咲く花を、手折り持ち…千たびの限り、恋ひわたるかも ページ42
「あの、アフロディ…」
「もう時間だ。みんなを待たせてるし、僕行くね!」
「あ、うん」
アフロディは微笑み、その金色の髪を風になびかせながらAに手を振って出口へ向かい駆けて行った。
「今日はありがとう! いい試合だったよ!」
その彼の背中に声をかけると、笑顔で手を振ってくれた。
アフロディの様子からして、もしかしたら傷つけてしまったかと思っていたが、どうやら大丈夫そうだ、と思いAもまた別の出口から仲間の元へ向かった。
◇
息が切れる程━━━━走ろうとした。試合に疲労も、まだあるちゃあ、ある。けれど足がもつれて進まない。浅い呼吸で息をする。
そして立ち止まる。
「はぁ……はぁっ…はぁ…」
FFスタジアムを五周したか、くらいの疲労感だ。
「はぁはぁ……はぁ…はぁ……!」
下唇を噛む。
わかっていた……わかっていた。わかっていた。
だから後悔しないように、ちゃんと向き合って彼女に話したかった。
曖昧なまま終わらせてしまったら、きっと後悔する。
でも━━━━━━━━でもっでもっ
「フラれたのか?」
背後から南雲の声がする。肩がビクッと震えあがった。
呆れたようなため息が南雲の口からは零れた。振り返ると壁に背を預け、腕を組んでいる涼野までいた。
「慰めはしねぇよ。あいつは、いつも俺たちと別次元で生きている。見ている景色が違う。感じものが違う。それを分かっていておまえは告ったんだろ」
「受け入れられないと、分かりながらなんて……君らしくないんじゃないかい、アフロディ」
やや説教じみた口調でアフロディを諭すように2人は話す。
けれどアフロディは、更に通よくした唇を噛み拳を震わせていた。
「受け入れてもらえなかったことが悲しいんじゃない!」
アフロディは珍しく、その感情を爆発させる。
クールに見えて感情的。暑苦しいとは言わないまでも物事に熱意を持ち、冷静に物事を判断する。中学生とは思えない穏やかさと落ち着きを持った彼が感情を剥き出しにすることなど、あることはそうそうにない。
赤い瞳には大粒の涙が溜まり、それがボロボロと落ちる彼の顔を見て南雲たちは呆然とその姿を見ていた。
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夜空(プロフ) - 続き楽しみにしてます。天界の使徒の方で。 (2022年8月27日 23時) (レス) @page44 id: 9767c8e410 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ(プロフ) - これからも続きを楽しみに待ってます!アフロディ好きやわ〜( ^^ )あ、天界の使徒に一票! (2022年8月27日 22時) (レス) @page44 id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - これからもイナクロ編やGO編を楽しみに、陰ながら応援しています!まだまだ暑さが残りますのでお体に気をつけてお過ごしください、! (2022年8月27日 16時) (レス) @page44 id: afad41e22a (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - コメント失礼いたします...!いつも更新される度に即飛びついて拝見させていただいています。元々アンケートはアフロディに投票していたのですが、今回の告白編を読んでさらに好きになりました。アフロディに500票ぐらい入れたいです。笑 (2022年8月27日 16時) (レス) @page44 id: afad41e22a (このIDを非表示/違反報告)
サカナ - 素晴らしい作品をありがとうございます!応援してます‼︎ (2022年8月25日 2時) (レス) id: 1825304d78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:活字不足卍 | 作成日時:2022年5月30日 16時