第214話・鬼道とお墓参り ページ26
気まずそうにして立ち止まる鬼道。すると道路を走る車が窓を開けた運転手がAに声をかけた。
「Aちゃん! おかえり!」
「おばさん!」
車窓から顔をのぞかせたのはAがよく母親のお墓参りに買う花屋の花道さん。
「今日もお母さんのお墓参りかい?」
「はい」
「そーかい! そーかい!…おや、隣の少年は……」
「チームメイトの鬼道です」
「あぁ〜〜!! はいはい! 鬼道君!!」
大きな声で頷く花道さんに困惑しながら会釈をする鬼道。
何を隠そう花道さんの旦那さんが元サッカープレイヤーで、草野球ならぬ草サッカーをしているらしくサッカーのことはよく知らなくとも、一緒にTVで観戦したりするそうだ。
「今大変だけど、頑張ってね!」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
すぐそこの駐車場に車を止め花道さんの花屋へ入り花束を買った。
Aの母親、幸は紫陽花が好きで、その花言葉も好きだった。がさすがに紫陽花にも時期があるため、紫陽花が咲くころには必ずそれを買うようにしていつA。
そしてお寺に向かう際Aは鬼道に一緒に行かないか、と誘った。
「…いいのか?」
「うん。構わないよ」
住職のお経を読む声が聞こえる中、Aは水道で桶を洗ったり水を汲んだりとてもテキパキを作業を進めていた。
Aの様子をじっと見つめていた鬼道。すると彼女は振り返り「どうしたの?」と聞いてきた。
「いや…随分綺麗にしているんだと…」
彼女の母親のお墓は毎日掃除されているのか雑草一つ生えておらず、墓石も新品のようにピカピカに光っていた。
「祖父母がいつもお参りするからね。私はサッカー試合前とか、気が向いた時に1人で来ることが多いけど…」
「…そうか…」
飛行機の事故で亡くなった鬼道の両親の遺体は見つからず、そのためお墓も立っておらず、せめてもお墓の世話ができるAがうらやましく思えた。
「お母さん…久しぶりだね。今日は試合だったんだ。引き分けになっちゃったけど…次は勝つよ」
「……」
お墓へ1人語り掛けるAの背を見つめる鬼道。彼女は口調は穏やかで、どこか寂しさを覚えるほど優しかった。そこへ静かに暖かな、包み込むような風が吹いた。
鬼道もA同様にお墓にお線香を焚き両手を合わせお参りをした。
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活字不足卍(プロフ) - 若いうちにやってみたいことの一つとして、バンジージャンプがある。でも咄嗟に腰が引きそうw (2022年6月9日 1時) (レス) id: 63abfde266 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - 続きが読みたい!!(クソデカボイス) (2021年2月27日 15時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
田中優香(プロフ) - 楽しみ過ぎる(豪炎寺の復帰はアツいね) (2021年2月26日 1時) (レス) id: da5dc9d8d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:活字不足卍 | 作成日時:2021年2月26日 0時