第053話・ひとでなし ページ7
スノーボードの特訓は夕飯の時間まで続いた。
「はぁ〜、いっててて…風になるのって大変だなぁ」
「しっかりしなよ。あたしは段々コツが分かってきたよ」
「うん。塔子さん筋がいいよ」
「問題は全身のバランスの取り方だな」
「ああ。スピードに乗る感覚さえ掴めば一気に世界が変わると思うぜ」
「そうそう、その感覚分かる！ ずば抜けて上手い奴もいるしな」
塔子はAを見た。
「？ 何？」
「Aって本当に初めてなのか？ 重りもつけてたのに」
「まあサッカーのために色々やったから」
「いろいろ？」
「肺活量を養うためにフリーダイビングもやった。バランス感覚を養うためにウィンドサーフィンや乗馬、男に力負けしない様に格闘技を少々。視覚や感覚、精神的にも弓道もやった。―――全部、サッカーのためにね」
「マジか…」
「うん」
「そりゃ何でもできる秀才だなんて言われるわけだな」
サッカーの為だけにこれだけの多岐に渡るスポーツをやったAに対し若干引き気味の土門。
「でも…」
「？」
「……私がサッカーの為だけに色んなものに手を付けた結果、色んな人を傷つけた」
これは以前風丸に話したことだった。あの時の例えが華道であったが、実際スポーツの世界は弱肉強食な面な強いのが多い。特に勝ち負けがハッキリしているものは。
そこれ彼女が突然現れ、平均を超えるものを手に入れる。すると彼女は突如として辞める。
「血の滲む努力をして本気で取り組んでいるのに、サッカーのためにただものにしたいとやって来た奴が努力して手に入れたものを全部奪ってゆく。それが気に食わなかったんだろうね…言われたよ」
―――ふざけるなっ！ この！ ―――
「ひとでなし、てね。まあでも実際そうだし…間違いじゃない」
自分に対し「ひとでなし」と放たれた言葉に傷ついたわけではない。競い合うことで傷つく者もいることを知っていた。比べることで悲しむ者がいることも。
「それでもやって来れたのは、サッカーをしたいから。サッカーためなら私は、他のスポーツにいる人も踏み躙っても何も思わない」
―――競い合い、比べることは嫌いでも目の前で泣いている人がいても彼女は気にも留めない。
第054話・24時間365日と1日→←第052話・風になりたい〜
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活字不足卍(プロフ) - ｱﾘｶﾞﾄｰｱﾘｶﾞﾄｰ 今日もコーラが美味い！ (2022年6月9日 1時) (
レス) id: 63abfde266 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - 54話はた○く細胞のことですよね？それにしても本当にこの小説好き!! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 作者さん、ボロくそ分かるぞそれv2さすがにそこまでは、いかないけども確かにさっくん(佐久間)も好きじゃ。でもね我の最推しは、神様仏様 "照美様" です！！(語彙力なくてすみません) (2019年8月8日 10時) (レス) id: baae3e32b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：活字不足卍 | 作成日時：2019年7月31日 0時
