転生者は、苦悩する Lv.4【イナズマイレブン】 (ページ28)

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第167話・虚ろな瞳ページ28

PKは決着がつかないまま2人の勝負はお預けになった。一之瀬は円堂に仲良くなった記念にウワサのトライペガサスを円堂たちとやることを決めたようだ。だが―――トライペガサスは決まらないまま、今日の練習は終えた。
　その日、夕方円堂が一之瀬を家に招待し、歓迎会をすると言い出した。そこへAも誘われた。

「あ、秋」
「Aさん」
「秋も呼ばれたんだね」
「うん」

　円堂の家に向かう際秋とAがバッタリ出会う。ふとAが持っている手提げが気になった秋は「それは？」と聞く。

「これはね、おばあちゃんが作ってくれたサルタナクッキーの差し入れだよ。イギリス料理は不味いって評判だけどおばあちゃんの料理は美味しいから！」
「サルタナ？」
「サルタナはイギリス英語、アメリカ英語だとレーズンのことだよ」
「よく知ってるわね」
「おばあちゃんクイーンズ英語使うからね。私も最初分からなかったよ」

　アメリカに留学していた秋。英語の成績は完璧だ。
　話しているうちに円堂の家に付き秋が戸を開き「こんばんは」と入っていく。玄関には男子たちの靴が乱雑に脱ぎ捨てられおり、秋が小さな悲鳴を上げる。

「あら秋ちゃん！ Aちゃんも！いいところに来たわ！お料理手伝って！」
「あ、はい…？」

　何でも一之瀬のアメリカのサッカーの話を聞きたいと次々に集まってきてしまったようだ。それで料理が間に合わずに困っているところに秋とAがやって来た。

「ふふっ、Aさん…羨ましいなぁ」
「え？」
「私も今日だけは男の子に生まれ変わってサッカーの話で盛り上がりたいなぁって…」
「……」

　微笑みながらおにぎりを握る秋が頬を染めながら言う。Aは秋の言葉を聞いて黙りこくってしまう。それに違和感を感じたのか秋がAを呼ぶ。

「Aさん？」
「…私がサッカーをする理由は、やるべきことがあるから。純粋な気持ちでやっているあの子たちとは、訳が違う。私のサッカーは穢れている」
「……―――」

　秋は「そんなことない」と否定したい気持ちがあるのに、何故だかAの顔を見ると言えなかった。Aは力なく笑い、虚ろな目でどこか遠くを見ていた。