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<Aside>
『チャンピオンに頼まれたから』とか、『面白そうだったから』とか。そういう……あやふやな答えが返ってくると、思っていた。
でも……きっとこれは相談という程の事でもないから。正直、何でも良かった。
私は……私が貴方が推薦したトレーナーだと、改めて胸に刻んで起きたいだけ。気合いを入れ直したかっただけ。
……………………なのに。
数秒、暖かくも冷たくもない風が吹き。彼の口から出た答えは、私の眼を見つめて、呟くように…
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「──────。…一目惚れ」
.
「…………………………………………は?」
突然、すぎて。脳内が停止したように、一瞬で記憶がごちゃごちゃになる。
……また、からかわれたとも思ったけれど。聞き返したのに、口を噤んで目を逸らすから……もっと訳が解らない。
脳内で、突然交通事故が起こったみたいに。記憶という車がパニックになる。そうして、そんな時に。色んな記憶が飛び出してきた。
第二鉱山で、助けられた時に言われた言葉。ダイに問われた質問。
全くどうして、そんな事ばかり思い出すのか。私に自覚させようとしているのか。
例えば、比喩的な表現だとか。バトルする姿に心を打たれたとか。そういう……
都合良くただ一つの意味として捉えてしまうのは……私も、キバナさんの事が──────
.
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……駄目、だ。
……心も、頭も、何もかも準備出来てるはずがない。
………………キバナさん……それから、神様。ごめんなさい。さっきは逃げなかったけど…………今度は逃げる事を、許してください……!
.
.
「──────待て」
「……っ…!」
黙って。何も言わずに。目も合わせずに。
一旦、一旦別れようとした。彼の横を走りさろうと。
けれど…………
フードの上から二の腕を掴まれる。強いようで……優しい力だった。
けれど、鼓動が止まらない。期待のそれとは違う。どちらかと言えば恐怖に近い。
逃げるのも、話すのも、何も出来ない小さなポケモンのように。ただ、彼の見下すターコイズブルーの瞳を見上げていた。
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作者名:のりゆ x他1人 | 作成日時:2020年5月1日 23時