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「────。」
戦いの蹄が残るフィールドの中央に、両者向かい合う。
面をかぶった少年がもじもじしながら、重たい袖から覗かせた小さな掌で差し出した黄金の欠片……ジムバッジには闇夜を掴んだ宝石が光っていた。
「……すごい…………すごく……強かった…」
そう言って、随分疲れたように息を漏らした。他方、ジムチャレンジャーの少年も呼吸を整えてから受け取った。
真剣勝負をした後の相手に、真正面から褒められることなんて慣れておらず、少年は戸惑う。
何と答えればいいのか分からず、代わりにはにかみながら手を差し出した。面の奥底の瞳に映る。
ジムリーダーの少年は恐る恐る、その手を掴む。次第にぎゅぅっと力が込められた。
「………ありがとう…!」
「…こちらこそ!」
ワァッ──!!!!と会場が熱狂する。チャレンジャーとジムリーダー。挑む者と挑まれる者。勝者と、敗者。
………けれど、この時だけは────仲の良い友達ふたり。誰の目にもそう映ったであろう。
…
………一人は顔を。一人は性別を。
お互いに隠しているものがあるからこそ───通じ合う何かが、あったのかもしれない。
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────
───
──
<Aside>
「とはぁ……っ」
更衣室のベンチに腰をかけると、同時に溜め息の塊が溢れる。ただ今回は"楽しかった"という気持ちが大きかった。
単純に、今までで一番歳が近いと思われるジムリーダーとのバトルだったからか。それとも……具体的では無い、もっと別の理由か。
……何にせよ、心の底から"良い試合"だったと、"また戦いたい"と、言えるような時間だった。
「……………。」
握られた手を開くと、輝くジムバッジがある。これで────四つ。
もう、なのか。ようやく、なのか。折り返し地点に辿り着いた。……あと半分。
…
……はやく、はやく終わらせないと。それは心に刻んでいる。
…………なのに………"終わって欲しくない"……なんて……
「……姉さんが聞いたら、怒るだろうな…」
鏡に映った自分の髪に、姉の面影がある……ような気がして。私は直ぐに
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作者名:のりゆ x他1人 | 作成日時:2020年5月1日 23時