Vierzehn ページ14
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御屋敷に戻って一度、メイド長がいる部屋に行く。まだ司様の元へ行く勇気がないから。
姫宮様や弓弦さん、天祥院様から後押しをしてもらったけれどどうしても不安が募ってしまう、だから最初から私を応援してくれていたメイド長に相談をする。
「 すみませんAです。今お時間はありますでしょうか 」
「 いいわよ?入っていらっしゃいな 」
メイド長の許可を得て私はドアノブを捻って部屋に入る。どうやら椅子に座っていたので書類のまとめ中だったようだから申し訳なく思ってしまう。
くるっと椅子を回転させて私のほうへ向いてくれるメイド長の表情は少しニコニコしていた。
「 こんな時間にどうしたの?何か悩み事でもあるの? 」
「 実は、先程姫宮様のご自宅へ参り相談をさせていただいていました。司様のことも全てお話しました。あの方々は良いんじゃないかと後押しをしてくださいましたがどうしても不安で…。私のようなメイドが主人に恋しても良かったのでしょうか…? 」
だって、あんまりだろう。
自分が仕える主人に対して恋心を持つなんて普通ならありえない、許されないことだろう。
それなのに、同じ身分である弓弦さん達に相談して後押しされたから勇気をもち告白に答えましたなんて笑えるでしょう?単純すぎる。
身分の違いなんてこの職を辞めてしまえばそんなことを考えずに済むのもわかっているけれど、そう簡単にここをやめますだなんて言える訳がない。奥様や旦那様にどんな顔をすればよいのかわからない、ずっと前からここで働かせていただいているのに。
少しするとメイド長は笑顔になってこう言った。
「 身分なんて気にすることないわ!それに司様と瀬名様が先程奥様と旦那様に話していたから恐らく大丈夫よ。安心しなさい?私達メイドもAちゃんの味方よ 」
「 司様と瀬名様が??あ、ありがとうございますメイド長。私、メイドさん達が味方にいたらとても心強いです 」
「 そう、それなら良かった。心が固まったのなら早く言ってあげなさい?報告楽しみにしてるわ 」
本当にありがとうございました、と告げて部屋を出て司様の元へ行く。
きっと今の時間帯ならお部屋にいるのでしょう。
ドアの前について火照る頬に手を当てて少しでも冷まそうとするけれど全く意味がない、緊張しているのか心拍数も普段よりずっと早く鼓動を刻んでいる。
深呼吸をしてドアを三回ノックして震える声でAです、とドア越しに告げた。
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作者名:のあ | 作成日時:2017年8月4日 7時