Notes【短編集】

記憶に残る：志麻 ページ17

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　タバコの匂いで、１人思い出すやつがいる。そこら辺のコンビニでは売ってないちょっと珍しいタバコは匂いも他とはちょっと違う。外国製のやつやったかな。

　「なんか甘い匂いする。」

　「それタバコやで。」

　「マジ！？まーしぃタバコ吸わんのによお知ってんな。」

　まあ、な。なんて坂田に適当にごまかすけど俺が知っとるんはこのタバコの匂いだけ。昔、付き合っとったやつが吸っとったタバコ。いわゆるタバコって感じの匂いは全然知らん。



　「またお前タバコ吸っとるん。」

　「いい香りでしょこれ。志麻ってタバコ吸わないよね。」

　「好きちゃうねんタバコ。」

　何回言ったって俺の横でタバコ吸っては笑っとった。何人も付き合ってきたし、アイツの後にも付き合ったやつはいたけど何でか忘れられへん。

　風上で吸っとったし、部屋の中とかでは吸ってへんかったのに覚えとる匂いなんよな。

　「なんで俺と一緒におるとき吸うわけ？」

　「タバコの匂いで私のこと思い出すかなって。」

　そんなこと言われたときは忘れるわ、なんて笑っとったけどAの言う通り未だにお前のこと思い出す。

　おかげさんでタバコ吸うやつと付き合う気にもなれんかった。どないしてくれんねん、なんて今はどこにおるかも知らん相手に考えてもしゃーないけど。



　「坂田、飯行かん？」

　「ええけど、えらい突然やな。」

　「なんか飲みたくなった。さっきのタバコのせいかもしらん。」

　「なんなん、思い入れあるん？」

　「まぁ、そんなとこ。」




　忘れられへんお前のタバコ。

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