中也、犬を飼う

子犬が六匹 ページ7

任務は思ったより早く終わった
車の中で携帯を確認すると会議の場所が変わったと通知が来ていた


「……首領、なんで俺の部屋なんですか」


「この子がここから離れなくてね……」


犬はというと中也愛用の椅子で呑気に寝ている
丸くなって規則正しい寝息をたてている


何だこの可愛いやつは
庇護欲がそそられる


徐ろに携帯電話を取り出しシャッターを切っていく
連写である。静かな部屋にシャッター音だけが響く
首領もエリスも、会議に参加する者も来ているというのに
芥川は未確認生物を見たかのような顔をしている
何とかこの空気から抜け出そうと森鴎外は咳をひとつし、切り出す


「さて、少々予定は変更したが会議を始めよう」


この一言で緊張感が増す


今回の会議の内容の資料に目を通す

一．敵対組織ノ対応ニ付イテ
一．今後ノ方針
一．中原中也ノ子犬ノ名前

……は？
二度見どころじゃない、五度見くらいする
挙句目を見開いて口も半開きの阿呆な顔で首領を数秒見つめていた
気付いていたか分からないが気付いていないことを願おう

「まず今後厄介になるであろう敵対組織は
今のところ花月(かげつ)會かな。
名前こそ可愛いけれど──────」


三項目目が気になりすぎて内容が頭に入ってこない


声が気になったのか子犬は起きた
覚束無い足取りで中也の方へ向かってくる
そして中也の足の間でまた眠った
可愛いの感情の容量がいっぱいになり溢れている
中也の周りに出ているハートが目視できる
マフィアの会議とは思えない、
和やかさで満たされた空間に一瞬にして変わった

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