東京合宿 ページ3
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「ナイッサー決めろー！」
早速無限ループの試合が始まると、音駒の最初の相手は梟谷。
今合宿のスタメンはなんと、犬岡に代わりリエーフがミドルに入っている。
前回、私たちが東北遠征でいない間、たくさん球彦がトスを上げたり、レシーブ練をしてあげたりとリエーフを鍛えてくれていたらしく、宣言通り短期間で驚くほどリエーフは上手になった。
「リエーフ！ダイレクトだ！」
「っよっしゃー！あぁっいて！」
まだまだ頑張らなきゃいけないところはあるけど、今だってもう少し早くジャンプしていれば、リエーフのダイレクトは100パーセント決まっていたと思う。
惜しいよー！とバインダーに得点を書き込みながら試合を見ていると、視界の隅で不振な動きをする金髪が見えた。
なんだろうと様子を伺っていると、両手にボトルを持ってうろちょろしている谷地ちゃんは、水道の場所を探している様子。
「谷地ちゃんスポドリ作りにいくの？」
「っひゃ、ひゃい！！」
まだ始まったばっかりなのに無くなっちゃったのかと不思議に思いながら、得点の記入を優生に任せて声をかけに行くと、とんでもなく怖いものと遭遇したような怯え方をされる。
音駒の…先輩マネさん…と呟く谷地ちゃんに、Aって呼んでと笑いかければ、目が潰れるっ！と訳が分からないことを言って顔を隠した。
「道わかんなかったんでしょ！
うちの学校、体育館の作り複雑だもんね」
迷ったら大変だし一緒に行くよと誘うと、一度教えてもらったこともできず本当にすみませんとひたすら謝罪を述べる谷地ちゃん。
あまりにも面白いキャラを発見してしまい、一人笑いを我慢していると、谷地ちゃんは不思議そうに私を見た。
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水道までの道を案内している間、ボトルを落として中身を零してしまいまして…と経緯を説明する谷地ちゃんは、役立たずの上に足を引っ張ってしまったと落ち込んでいる。
「役立たずなんて、自分にも言っちゃだめだよ」
谷地ちゃんは誰が見たって頑張ってるし、失敗なんて誰にでもあるんだから！と親指を立てて笑いかけると、なぜか泣きそうな表情でこちらを見る。
その後、谷地ちゃんのスポドリ作りを手伝いながら、少しずつ距離を縮めた私は仁花ちゃんと呼ぶようになり、仁花ちゃんを妹のように可愛がった。
「仁花ちゃん、やばい！そこ虫！」
「ぎょぇ！？」
「ウソ」
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
