検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:6,537 hit

第二波 ページ3

「これは、中隊長」
廊下を歩いていた大石は、背後からの呼びかけを受け振り向く。
「ああ、大 野中尉。何か?」
「いえ。…最近、片岡少尉がどうも調子に乗っているように思えてならないのですが、中隊長はどうお考えか、と」
あまりにも直球なその問いに、大石はため息を吐く。なんだってそんなことを自分に言うのか。
「中尉。片岡と何があったのかは知らんが隊内で波風を立てないでくれないか」
「しかし、中隊長。隊内で問題になっている人物の処分は貴方のお役目でしょう」
「待て待て。まず私は彼を問題とは感じないが?」
そう言った大石を、彼は馬鹿にしたような顔で見つめた。
「失礼ですが中隊長はどうも勇気が足りないようで。部下へははっきりと言ってこそでしょう。貴方はいつもそうだ」
その言葉に、流石の大石も怒りを顔に浮かべた。暴言を吐きそうになったのを深呼吸し、彼は答える。
「少しは身分をわきまえて話さぬか。そう毎日私に言いがかりをつけて何が楽しいのやら」
「おや、そのようなことを言われるとは心外。そうやってまともに取り合ってくださらぬから……」
段々双方とも声が高まっていき、何人かが野次馬根性で顔を覗かせる。しかし騒音の元が彼らであることを知ると、興味を失ったように去っていった。最早二人の言い争いは、党の皆にとって日常茶飯事だった。
「お二人とも、首相官邸の中でございます。お鎮まりを」
彼らの背後から、冷静な声が聞こえた。二人が同時に振り向くと、片岡が呆れたような顔をして立っていた。普段なら大 野もこうなればすぐにやめる。しかし今日ばかりは事情が違う。言い争いの火種でもあった片岡を、大 野は睨みつけた。
「首相に可愛がられているからと調子にのるんじゃないぞ」
「なっ…!」
嫌味のこもった彼の言葉に、片岡は唇を噛み締めた。
「中尉。その言葉はあまりにもっ…」
身分差も忘れ、彼が怒鳴り声を上げようとした。ちょうどその時。
「お前たち。そこで喧嘩をするな……。こっちまで声が響いてきているぞ」
執務室から凛とした声が響く。
「首相!?」
大石と片岡は同時に驚愕の声をあげた。
「申し訳、ありません。お邪魔してしまいまして」
気まずそうに謝った二人に浅野は呆れたように笑い、また執務を再開した。
厳しい事を言おうとも、彼は部下たちを心から大切に思っていた。

大 野は小さく舌打ちをした。それが誰に対してのものか、自分でもわからなかった。

その舌打ちは、誰にも気づかれず消えていった。

第三波→←第一波



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (17 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:忠臣蔵 , WW2 , 合作
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。