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#アフタークリスマス ページ25

「なぁ、機嫌直して?俺が悪かったから〜……」
「面と向かって言ってくれるのなら直すんですけどね!」

そんな〜、と少し涙ぐんだような甘えた声を出す、電話越しの向こうにいる彼。すっかりクリスマスが終わった今、街では年末の雰囲気はすでに飛んでいて、お正月の商品たちが売り出されている。片手で携帯電話を耳に当てながらもう片方の手で爪をいじくっていると、彼はさっきからずっと口にしている言葉をもう一度言った。

「ほんまごめん。クリスマス俺だって一緒にいたかったよ?でも、どうしてもその日にしなきゃいけない仕事があったもんやから……」
「それは何回も聞きました」

彼から見えないけれどぷいと顔を横に向ける。ドライヤーを済ませた後の髪の毛から、かすかに残っていたらしい水気が宙を舞った。私が今どんな姿勢で電話をしているのか彼はきっとわからないだろうけど、私が拗ねていることは確実に気づいているだろう。というか、全く包み隠さずに感情を口に出しているのだから、気づいてくれないとかえって困る。

しきりに、ごめんな、と謝っている彼の言葉を右から左へ流していく。

(本当は、)
クリスマス当日一緒に過ごせないことを、頭のどこかで分かっていたのだ。学校が冬休み期間に入った瞬間からずっと待機していたけれど一向に連絡は来ずで。有休をとるタイミングもつかめない程の忙しさを持つ彼の休みが、クリスマスに被ることなんて、ないことくらい分かっていた。それでももしかしたら、と淡い期待していた私だけどクリスマスの1週間前に「仕事で予定をキャンセルさせてほしい」と文面で伝えられてしまったものだから、ここは完全に諦めるしかなかった。寝る前の通話が日常となっていた彼が通話をかける時間もないくらいだ、きっと本当に忙しかったのだろう。もしかしたら、今もなお忙しいかもしれない。

クリスマスの一大イベントを逃したとしても、まずそもそも2週間近く会えていないし、とここでさらに追撃すれば彼の口は閉じる。

きっと私は待っていた。さっきからクリスマスに会えなかったことを責めては彼が黙り、謝罪した時には逆に私が黙るという繰り返しだ。我ながら子供だな、と思う。彼は私の拗ねている姿を想像しながら、困ったように眉を寄せているのだろう。そんな彼を想像していると、ふっと笑みがこぼれた。

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ヒロ(プロフ) - 消えた字、見つけた。好きです。頑張って下さい。 (2019年11月14日 23時) (レス) id: 7769e45292 (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年7月7日 15時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
とある暇人 - 文章が読みやすくて一気に読んできました←これからも更新頑張って下さい! (2019年1月15日 19時) (レス) id: 09ab6582bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねこた | 作者ホームページ:***  
作成日時:2018年11月24日 14時

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