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12ー吐露3ー ページ13

それから私が泣き止むまで速水さんはずっと頭を撫でてくれていた。
 泣くのは意外と体力がいる。一通り泣いて涙も枯れて、頰を伝う涙をハンカチで拭った後そう思った。でもこの疲労感が少し心地良い。
 泣くのは終わったのだから甘えるのも終わりだ。頭に置かれた速水さんのあたたかい手。名残惜しい気持ちはあるけど、そっと屈んでその手から離れる。
 ……離れたはずなのに何故かまた撫でられている。

「あの速水さん……もう落ち着いたので、大丈夫です」
「え? まだ足りないでしょ?」

 そこは速水さんの基準で測られても困る。多少大目に距離をとったが、まだ彼の目には私は弱々しく見えているのだろうか……子犬を撫でようとしたら逃げられてショックみたいな顔しないでほしい。
 でも彼のおかげで随分と落ち着いたのは事実だ。いつも通りの自分が少し戻ってきた気がする。だからきっと今ならできるはず。

「足りてます十分です。ありがとうございました」

 今度こそ本当に自然な笑顔でお礼を言えたと思う。自然と笑える相手が目の前にいる事が嬉しかった。

「貴方のおかげでまた笑えてますよね私? いやぁ『絶対アイドル』の凄さ、わかった気がします」

 少しおどけた風に喋る事もできるくらいには元気が出たつもりなんだけど、速水さんの表情はあまり明るくない。何か問題があるのだろうか?

「速水さん?」
「あのさ、笑ってくれたのは嬉しいんだけど……Aちゃんはこれからどうするの?」

 どうやら私のこの先まで心配してくれているらしい。

「警察に事情を話して保護してもらおうかなと思ってます」

 さっきまではどうしても嫌だったのにこう言えるのは、速水さんが私の話を聞いて信じてくれたからだ。だから他の人が信じてくれなくてもきっと大丈夫、だと思いたい。

「引き取り手は見つからないと思うので、多分何か施設とかに行くんじゃないですかね。詳しくは知りませんがその辺りは大人に丸投げします」
「君はそれで……いいのかい?」
「いいも悪いもこれ以外思いつかないんですよ」
「だからって、そんな簡単に」
「もしいつか本当に落ち着いて余裕ができたら、今度こそ私の意思で速水さん達のショーのチケット申し込みます!そして笑顔で楽しませてもらいますんでよろしくお願いしますね!」

 チケットの競争率が高くて取れないかもしれないけど夢を見るのはタダだ。でも本当に観られたらいいな。

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設定タグ:キングオブプリズム , KINGOFPRISM   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:たま | 作成日時:2020年12月3日 0時

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