百八十五 ページ35
「……A、話だけでも聞いてくれやせんか」
急いで追いかけて掴んだものの、その手をどうすればいいのか。どんな顔をしてAを見ればいいのか。どうしたら前のように俺を見て微笑んでくれるのか。
分からない。
分からないから、懇願するしかない。
この、胸の中を渦巻く感情が、今は辛くてしょうがない。
「頼みやす。」
呟くように言う。
もしかしたら、もう二度と俺の顔を見たくないのかもしれない。
「手を……放してもらえますか?」
大人しく、握った手を離す。
彼女はゆっくりと、風で長い黒髪を靡かせながら振り返った。その顔は、ひどく困ったような、悲しそうな、辛そうな……複雑に様々な感情が混ざり合って絡み合っていた。
「……隊長、ひどい顔してますよ」
俺もか。一体どれほどひどい顔をしているのだろうか。鏡があるなら見てみたい。
少しだけ、Aは可笑しそうに笑った。
つられて俺の口角も自然と持ち上がる。
「お前も大概ひどい顔ですぜィ」
「乙女に酷いこと言うんですね」
「女として扱われたくないって言ったのはお前だろィ」
「……そうでしたね」
冗談めかした久しぶりの会話も、ここで途切れる。
少しして、ようやく彼女は声を発する。
「逃げたりして、すみませんでした。逃げませんから、少し、落ち着いて話をしましょう」
「……ありがとう」
「隊長は、怒っていいんですよ?散々、酷いこと言って、やって、せっかくの覚悟を踏みにじってたのは私なんですから」
「いや、俺もお前のこと何も知らないで、無責任なこと言ってた。だから、あいこにしやしょう」
そう言うと、ホッとしたように息を吐き、Aは疲れたような笑みを浮かべた。そして、頬を数回叩くと真面目な面持ちになって、こちらを見つめる。
「隊長、私の事情を知った上で、それでも、私のことを想ってくれるんですか?」
言葉一つ一つが重い。
けど、それで変わるほど安い決心をしてきたわけではない。
「俺は……、俺の気持ちは……何一つ変わりやせん」
「それは、私が刀を握れなくても?」
頷く。
「私が……何人も殺めてきたとしても?」
Aの声が震えた。
俺はもう一度頷く。
「本当に、私でいいんですか?」
緑の瞳が、俺を捉えて放さない。
こんな顔をされて、嫌だと言える奴なんて居ないはず。目に入れても痛くない。そう思えるほど俺は、惚れていた。
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伝説じゃないパンダ - お久しぶりです!コメントは全然大丈夫です!忙しいと思うので(^^;)テストの結果が良かったことを祈ってます!今回もとても面白かったです!続きも楽しみに待ってます!!!(*´∇`*) (2019年9月15日 13時) (レス) id: dcff47e5eb (このIDを非表示/違反報告)
ちびロボ(プロフ) - 伝説じゃないパンダさん» 先月のコメントに返信できず、申し訳ありません(T-T)毎月毎月ありがとうございます!1ヶ月更新を待ってくださる伝説じゃないパンダさんの懐の深さに感謝です(^^)テストが終わり次第書き溜めたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m (2019年7月18日 18時) (レス) id: 6ccebea4a4 (このIDを非表示/違反報告)
伝説じゃないパンダ(プロフ) - あ!伝説のパンダです!伝説じゃなくなりましたが!w (2019年7月18日 3時) (レス) id: 38426ec896 (このIDを非表示/違反報告)
伝説じゃないパンダ(プロフ) - 発狂するかと思いました!(笑)夢主ちゃん!頑張れ!← 毎月、面白いお話が読めて幸せです!更新については、焦らないでくださいね!勉強に支障が出てはいけませんし!レポートと、テスト。。。辛いですね。勉強頑張って下さい!私は一から読み直します!! (2019年7月18日 3時) (レス) id: 38426ec896 (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - 本当に今回も最高でした!夢主ちゃんよかったですね〜!本当に安心というか!夢主ちゃんの復帰の仕方も、あの人達らしいというか、、、、w本当最高です!大変かと思いますが、最後まで私も応援しますので、こちらこそよろしくお願いします! (2019年6月15日 12時) (レス) id: 7058246684 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちびロボ | 作成日時:2019年4月2日 15時