百八十二 ページ32
「今現在行方不明になっている女性は二人とも、このバーに来て、足取りを眩ませている」
車から降り、道を挟んだ右側にあるこじんまりとした建物を見やる。三階建てのその建物は、周りに比べて目立つ看板を立てている訳でも、美男美女の客引きがいる訳でもない。パッと見、繁盛しているようには思えない。
「それで、具体的には私と山崎さんで何をするんですか?」
「んー……しばらくは、ここで見張りかなぁ」
ここと言って、山崎さんが指差したのは、例のバーとは道を挟んだ反対側、真正面ではなく斜め横のアパート。
「……汚そうですねぇ」
呟くと、山崎さんは苦笑した。
「ごめんね。急いで借りようとしたら、ここしかなかったんだ」
「とりあえず、日が暮れるまで私は部屋の掃除をするので、山崎さんは機材を運び込んで、張り込みの支度をしてもらえますか?」
「さすがAちゃん、助かるよ」
鍵を受け取りアパートの部屋へと向かう。歩く度に軋む階段を上り、部屋のドアを開けると、埃っぽいむせこむ空気が中に立ち込めている。玄関先には箒と塵取り、雑巾、バケツなどが用意されており、電気、水道、ガスは既に使えるようだった。
「よし、始めるか」
黄ばんだカーテンを開き、窓を開け放つと新鮮な空気が部屋に流れ込む。まずは箒で天井や棚、カーテンレールなどの上の埃を払い落とす。申し分程度にあるベランダを掃き掃除し、窓ガラスを磨き、室内の床掃除を済ませる。その間にも、山崎さんは先に片付けておいた玄関と廊下で機材を広げ、組み立て、夜中の張り込みの準備を進めていた。
「お疲れ様」
夕方になりようやく腰を落ち着けることができた私に、山崎さんは声をかける。
「お疲れ様でした。夜中は、交代で見張りをするのでいいんですよね?」
「うん、そう」
山崎さんは頷くと、片腕に引っ掛けていた袋の中から衣服を取り出す。
「隊服のままだと気付かれる可能性もあるから、これに着替えてもらえるかな?俺は洗面所で着替えてくるからさ」
「ありがとうございます」
「好みが分からないから、適当に安いの買ってきちゃったけど、許してね」
洗面所に向かう前に冗談っぽく山崎さんはそう言った。渡されたのは女性ものの着物で、淡い緑色の生地に小さな花の刺繍が点々と入っているものだった。帯は黄色で、布の触り心地からして安物なのは確かだったが、派手過ぎず、地味過ぎない、無難なものだと思った。
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伝説じゃないパンダ - お久しぶりです!コメントは全然大丈夫です!忙しいと思うので(^^;)テストの結果が良かったことを祈ってます!今回もとても面白かったです!続きも楽しみに待ってます!!!(*´∇`*) (2019年9月15日 13時) (レス) id: dcff47e5eb (このIDを非表示/違反報告)
ちびロボ(プロフ) - 伝説じゃないパンダさん» 先月のコメントに返信できず、申し訳ありません(T-T)毎月毎月ありがとうございます!1ヶ月更新を待ってくださる伝説じゃないパンダさんの懐の深さに感謝です(^^)テストが終わり次第書き溜めたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m (2019年7月18日 18時) (レス) id: 6ccebea4a4 (このIDを非表示/違反報告)
伝説じゃないパンダ(プロフ) - あ!伝説のパンダです!伝説じゃなくなりましたが!w (2019年7月18日 3時) (レス) id: 38426ec896 (このIDを非表示/違反報告)
伝説じゃないパンダ(プロフ) - 発狂するかと思いました!(笑)夢主ちゃん!頑張れ!← 毎月、面白いお話が読めて幸せです!更新については、焦らないでくださいね!勉強に支障が出てはいけませんし!レポートと、テスト。。。辛いですね。勉強頑張って下さい!私は一から読み直します!! (2019年7月18日 3時) (レス) id: 38426ec896 (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - 本当に今回も最高でした!夢主ちゃんよかったですね〜!本当に安心というか!夢主ちゃんの復帰の仕方も、あの人達らしいというか、、、、w本当最高です!大変かと思いますが、最後まで私も応援しますので、こちらこそよろしくお願いします! (2019年6月15日 12時) (レス) id: 7058246684 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちびロボ | 作成日時:2019年4月2日 15時