【銀魂】隼と呼ばれた鬼 4

百六十三 ページ13

「ど…………う？」

唐突な質問で驚いたこともあったのか、身体を固めて、思考を停止させてるように見える。
顔の前で手を二度、三度振っても反応しないほど、パニックというか、何というかを起こしているようだ。

「おーい……総悟くーん。銀さんもしかして、思春期の綺麗な心を貫いちゃった？ね、そうなの？」

しばらく呆けていたが、総悟君はやがてハッとすると額を押さえて壁に背を預けた。そして、すっかり忘れていたことを思い出してしまったかのように、深い深いため息を吐いた。

「え、まさか本当にホの字なの？！」

「耳元で騒がねェでくだせェ、旦那。第一、まだ惚れただなんて一言も言ってないですぜ」

いやいやいや、もうそんなん決定してるようなもんでしょ！という言葉を何とか飲み込んで、いつもの飄々とした様子とは打って変わった彼を新鮮な気持ちで見つめた。

「ついでに……いつから？」

「…………この前の作戦以来」

「そんで、Aにアプローチした？しちゃった？」

「それができてたら、苦労しやせん」

まあ、ごもっとも。

「いやあ、あれの保護者として、そろそろ身を固めて欲しいと思ってたんだよねー。銀さん、総悟君のこと応援しちゃおっかな！」

「別に、旦那の助けなんかいりやせん」

「あー、またそうやって純粋な天然の心を傷つける！ちょっとは俺のガラスのハートのこと気遣ってよ！ねえ！」

「あー、うるせえ、うるせえ」

「総悟！」

不意に、室内から土方の声が響く。
それを聞いた彼は明らかに機嫌を良くしたようで、ニヤリといつもの笑みを顔に浮かべるとヒラヒラと俺に手を振って不適に微笑んだ。

「まあ、旦那の助けなしでも俺は俺であいつのこと落とすんで、見ててくだせェ」

数分後、何がどうなってそうなったのか。
万事屋から担ぎ出されるAが、総悟君の肩越しに俺の顔を見て何やら助けを求める。
なんか、この前もどっかのモジャモジャにおんなじ事されてなかったか？

「銀ちゃん？！何がどーなってこーなってるの？！」

「旦那ァ、あとでこいつの荷物取りに行くんで、まとめといてくだせェ」

「勝手に話を進めないでください！というか、降ろして、離して、説明してー！！！」

「というわけで、あとは頼んだぞ、万事屋」

「いや、君たちねぇ……もう少し本人の意志を」

呆れて物も言えない。もう少し知的な方法で連れ出せないものか。こんなの、ただの誘拐じゃないか。
こうして、晴れてAは真選組に復帰した。

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