【銀魂】隼と呼ばれた鬼 4

百五十二 ページ2

斬り捨てても、斬り捨ててもキリがねェ。
あと何人斬りゃいいんだ？
もう、腕が重い。
血塗れの体は乾いてどんどん重くなる。振りすぎて刀も血を吸いすぎてる。俺は……、仲間を死地に追いやったのか。
見回せば、俺の周りではまだ何人もの隊士達が背中合わせに懸命に戦っている。俺のとこは残っているが、総悟のとこは？他はどうなった？
何人死んだんだ。
目の前の男を一刀両断した刹那、人垣の奥にあの男＿＿高杉晋助の姿があった気がした。紫の衣に舞う大きな蝶が、奴の存在を辺りに知らしめる。

＿＿届け。

身体中に残ってるありったけの力を掻き集めて、足に力を込める。

＿＿届け！

まだ終わっちゃいねェと、自らを鼓舞し、駆け出す。

＿＿届けッ！

壁となる男どもを斬り伏せ、高杉の元へと駆け抜ける。腕、足、脇、背中、動く度に切り傷が増えるが、気にしてる暇なんてない。止まることはすなわち、死を選ぶということだ。
＿＿この刃が奴の首筋に届きさえすれば。
＿＿大将の首を討ち取りさえすれば。
この虐殺紛いの戦場で死んでいった者たちも少しは報われる。
Aを斬り伏せたこの男を、俺は許せねェ。けどそれよりも、あいつに、真選組と高杉を天秤にかけさせた俺自身が、俺は、一番許せねェ！

「＿＿届けぇぇぇッ！」

最低な行いを働いた俺自身を斬るかのように、まるで獣の如き叫び声を上げて刀を振るう。
一直線に、ぶれずに。ただひたすらその男のみを視界に捉えて。
繰り出した突きは、寸分違わずに奴の喉元めがけて突き進む。しかし、奴とて馬鹿じゃない。そんな種も仕掛けもない単純な攻撃にやられるほど、やわではなかった。
キィンッ
高い金属音とともに、少し後ろの地面に刀の折れた先が突き刺さる。
驚いた。
まさか、攻撃を見切るどころか、刀を斬っちまうなんてな。
グッと悔しさとともに歯に力がこもる。
成す術もないとは、まさしくこういう状況を言うのだろう。

『＿＿ツー……』

不意に、港に設置してある巨大スピーカーのスイッチが入った。そして、しばしの機械音の後に聞き慣れた声が響く。

『ぅおっほん、えー、真選組、鬼兵隊の皆々様、聞こえてますか？』

馬鹿みたいに明るい声が、血生臭い戦場に響く。マイクを通してだからなのか、一ヶ月ほど会っていないからなのか、若干声が違く感じられた。

『現在、真選組が劣勢とのことなので、真選組自称参謀こと、小日向 Aが、素晴らしい打開策を考えました』

『ぶっちゃけると、爆発ですね』

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