【WT】私と貴方とスポーツドリンク ＜短編集＞

私と貴方と長所＜kr＞ ページ40

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私は昔から不器用だ。


裁縫や料理はおろか、ハサミだってまともに使えやしない。
かと言って手で切ろうとするとあらぬ方向に破れる。

私はこんな自分が嫌だった。

周りにはお菓子作りが趣味だったり、デザイナーの仕事をしている友達もいるというのに。
自分には女子力の「じ」の字も無い。

それで落ち込んでいた私を救ってくれたのは同じ大学のきりやんだった。

彼も暇じゃないだろうに、毎日私の料理の練習に付き合ってくれた。

包丁を扱うのに失敗して、いつも傷だらけだった私の手に丁寧に絆創膏を貼りながら、


「大丈夫、Aは絶対料理上手くなるよ。俺が保証する」


そう言って笑った。

最初は本当にブラックホールのように真っ黒だった私の料理も、今では色がしっかり分かるようになってきた。
あの時の「美味しい」って言ってくれた彼の顔が忘れられない。


自分が彼に恋をしていると気づくまでそう時間は掛からなかった。


だけど、私と彼じゃ釣り合わない。

周りには私なんかより可愛い子がいっぱいいる。
それに、私はハサミだってまともに使うことが出来ない。

その恋は、叶うはずがなかった。


でも、叶ってしまったのだから、人生とは何があるか本当に分からない。

大学が終わった後、突然彼に呼び出され告白されたのである。
勿論、好きな人からの告白だ。「はい」以外の選択肢は無いはず。

でも、本当に私で良いのか。という考えばかりが頭に浮かんだ。

私はダメ人間だ。
どうしようもないぐらい。

でも、彼は私を離さなかった。


「裁縫が出来ない？料理が出来ない？そんなの小さな事でしかない。
　俺はAのその正直さを好きになったんだよ。苦手な事にも諦めずに挑戦するその姿。
　それがAの長所だから。もっと自分に自信を持ってよ」


彼の言葉で私は変わることができた。
自分の短所ばかりに目を向けていた自分とはもう違う。


得意なことも、苦手なことも、彼と助け合って。


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