【文スト】Stray Love3 (ページ35)

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福沢諭吉(2) ページ35

Aside

言っちゃった。
"好き"こそ言えなかったけれど
本命だって言っちゃった。

少し困り顔の社長。

嫌だよ、この少しの静寂も
今は永遠に等しく感じられた。

福「気持ちは嬉しいが...」

その、切り出した第一声に
涙がにじむ。

福「私もAを嫌いではない。
しかし、私はもうこんな年齢だ」

震える声を絞り出す。

『私は年齢なんて......どうでもいいです』

福「...私はもう既に40後半だ。
Aは20の前半。
例えば人は皆80で死ぬとしよう。
私は20年、Aをひとりにすることになる」

分かってる、それくらい。
少し苛立ってしまう。
でも、誤魔化せない気持ちがあった。

福「...もっと相応しい人がいるはずだ。
きっとこれから出会うだろう。
...もしかするともう出会ってるかもしれない」

『私に相応しいかどうかは私が決めます』

.....なんでこんな
刺々しい言い方になっちゃうのかな。

すると、社長はふっと笑い、

福「...そうだな、
私がAの人生を決めるわけにはいかない。
だが、私にAは若すぎる。
.........気持ちは嬉しい。受け取っておく」

社長は優しすぎるから駄目なんだよ。
私が諦め悪いから、話の中心を自分においた。

....気遣いがあたたかいから。
だからまた惚れちゃうんだってば

『....これも受け取っていただけませんか』

再びチョコレートを差し出す。

福「あぁ。有り難う」

それを受け渡すとき
......ふと、手が微かに触れた。

心臓が、ドクンと音を立てて跳ねた。

顔に血がのぼる。

私はお礼を叫んで逃げるように社を出た。