「馬鹿やろー＿＿＿＿思春期男子、なめんなよ」- 浪川 蓮助 -

終。07 ページ7

「最近、なんかあった？」



「えっ？」

始業式の日からもう二週間が経とうとしていた。
あれから私は、彼と一度も言葉を交わしていない。

彼はサッカー部で忙しそうにしているし、
私なんかが話しかけていい存在では……って何を言ってるんだろ、自分。


水鳥は何かを察知したのか、唐突にそんな事を聞いてきた。



「うーん……？」



最近は特に何もない。

授業が本格的に始まって疲れもあるが、特別環境が変わる事ではない。
感の鋭い水鳥であっても、肯定は出来なかった。



「特に何も？」

「……なんか、あたしの予知では、Aが嬉しそうにしてるから」

「なにそれー」



いくらなんでも水鳥が超能力者みたいな事を言うとは。

その意外性に「ぷっ」と吹き出す。



「うるせー笑うな」

「ごめんごめんっ」




変化なんてある筈がない。

クラスの中でもうカップルが誕生してしまっているが、私に限ってそれはない。


嬉しいことなんてーー。







「水鳥ー帰らないの？」


「悪ィちょっと別用」


「わかったー」



水鳥とばいばいして下駄箱へ向かう。

自分の組みの列の靴箱は誰も居なくて、しんとしていた。
薄暗さが気になりつつも、ロッカー式の箱をかぱっと開けた。


ローファーの縁を両方人差し指と中指で摘まんで地面へ落とす。



影がゆらりと揺れた。




邪魔にならないように少し右へズレる。







「さ、さようなら」


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