episode 42 ページ42
＊
「……あれ、大吾起きてたん？」
久しぶりに“あの子”のことを思い出して、少しだけ胸がキュッて鳴った時、聞き慣れた声が俺の名前を呼んだ。
「……あぁ、うん、なんか寝られへんくて」
「俺も。たまにあるよな、そうゆう時」
そう言った廉が、暗いキッチンの中へと入ってきた。
「……大吾もなんか飲むやろ？」
冷め切ったお湯が入ったケトルへと手を伸ばした廉が、なにかを悟ったようにそのスイッチを入れた。
あえて電気を付けへんのも、わざとやろ？
「コーヒー…だと、余計寝られへんくなるか」
何にしよかな、とキッチンの棚を物色する廉の姿には、見覚えがあった。
あの時も、そんなんしてたよな。
俺が、“あの子”との終わりを迎えたあの日。
「………おかえり、」
あのまますぐに帰れる余裕もなくて、行く当てもなく夜を彷徨ってた俺。
みんなが寝静まった後に戻ってきて、ふらふらとこんな風にキッチンへとやって来た俺を見つけたのが、廉やった。
おかえりって言ってその声はいつも通りなはずなのに、やけに優しい音になって俺の耳に届いて。
「………ぉぅ、」
ずっと堪えてた涙が、思わず零れたんやっけ。
「これとこれやったら、どっちがいい？」
暗がりの中で俺を呼ぶから、そっとスマホの画面を切って椅子から立ち上がる。
不思議やな、さっきまであんなに立つのが面倒やったのに。
「……こっち、かな」
「じゃあ俺もそっちにしよ」
そう言った廉がちょっと嬉しそうにしてんのは、その声だけで分かった。
ほんまは最初からそっちが飲みたかったくせに。
そんくらい、お見通しやで。
でも、
さり気なく俺を気遣う廉もたぶん、俺の気持ちは全部お見通しなんやろな。
だって、
勝手に飲んだら怒るかな、なんて言いながらココアの粉をマグカップに入れてる廉が思い浮かべてんのもきっと…
想いが重なる事のない相手やから＿＿＿。
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ナッチェル(プロフ) - 自分語りしてるようですみません...笑 何故人を思う気持ちは曖昧になってしまうんでしょうかね...今回は書かれていない所や立場毎の揺れも見れた気がします。次に私は何を感じるのかな。今からワクワクです。これからも応援してます！ (2020年10月3日 0時) (
レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 親友は今でも大親友なのですが笑、私の中であの時の寂しい苦しい温もりを求める気持ちは、曖昧で、確かに存在してたな、と振り返れたし、スッキリしました。時系列や立場、ニュアンスが違う所も様々あると思いますが、これまでより感情移入しました。なんか、長々と (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 怖いほど書かれていました。あぁ、私は「もっと求めてほしくて、もっと一緒にいたかった」んだ、もっと求めてくれると思ってた、最後まで敵わなかった、って咀嚼出来ました。彼への依存は悩んでるうちにまぁいいや、ってなってお気に入りから連絡先を消して吹っ切れたし (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 行ったり。大抵私からの誘いでした。あの時の「好き」とは違う感情で接してて、でも名前はつけられなくて、まさに「曖昧」でした。依存してたんだと思います。輪郭のなかった何かが吾君編を読んで少し見えたんです。大吾の心情、みぃさんのあとがき。当時の気持ちが (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチェル(プロフ) - 私はずるかったなと改めて...。自分が賢いとは思いませんが、人の気持ちに気づいてしまう部分があるのでそこに共感したというか...その後2人は付き合って割とすぐ別れるんですが(おい！笑)、彼と私は仲良いままやり取りがダラダラと続いて、たまに2人で遊びやご飯に (2020年10月3日 0時) (レス) id: 68459828d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みぃ
| 作成日時：2020年9月19日 12時
