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あの場所。 ページ16

「あの場所」に着いたのは、夕方の4時45分だった。まだ3月なので少し肌寒い。
「貴利矢、まだかなぁ…。」
少し待っていると、
「A」
後ろから聞き覚えのある声がして、あたしは振り返った。
そこにいたのは、
「…よっ。」
貴利矢だった。
丸サングラスを少し下ろして、陽気に手を上げて笑っている。
「貴利矢!」
あたしは駆け寄って、貴利矢に抱きついた。
「…うぅ〜っ…」
貴利矢は困ったように笑って、あたしの頭をぽんぽん、と撫でてくれる。
「バカ、泣くな。自分が泣かせてるみたいじゃんか」
あたしは涙を流し、少しいじけたように貴利矢を睨みながら言った。
「うっさいばかっ、あたし、心配してたんだからねっ」
貴利矢はふふっと笑って、あたしの涙を指でそっと拭い、その指を口に含んだ。
「‼」
貴利矢はニヤッと笑うと、
「何でここだってわかったの?」
と、聞いてきた。
ここはどこなのかというと、聖都公園の噴水広場。
綺麗な緑の芝生が敷かれていて、噴水は真っ白な石で出来ている。
ここはあたしと貴利矢のお気に入りの場所で、よくここで遊んだり、受験勉強の気晴らしに来たりしていた場所だった。
「その…ここしか、思い浮かばなかったの」
「あっそう。でも一発で浮かんだのは嬉しい。それだけ思い出があるって事でしょ?」
あたしは言葉に詰まったけど、
「…まぁ、そうなんだろうね」
とだけ返事しておいた。
貴利矢は時計を見て、「そろそろ…」と呟いた。
「またどこかに行くの⁉」
「まーね。…じゃ、また今度。」
やだ。
貴利矢が、離れて行っちゃう。
「…行かないで…っ」
あたしは貴利矢の着ているレザージャケットの袖を掴んでぐいっと引き寄せると、思いっきり背伸びして、貴利矢の唇に自分の唇を重ねた。
「っ⁉」
貴利矢は驚いてたけどあたしを遠ざけたりはせず、黙ってされるがままになっていた。
「…ぷはっ」
あまりに集中しすぎて酸素が足りなくなり、慌てて深呼吸する。
貴利矢は目をまん丸くしてあたしを見ていたけど、やがてふっと笑って、
「…やっぱり、お前最高」
と、今までとは違う冷たい笑顔で言った。
「これだけは避けたいと思ってたのになぁ。全部、お前の所為だからな」
貴利矢はそう言って、あたしに近づいてきた。
そしてあたしの目の前まで来るとあたしに目線を合わせるようにして屈みこみ、
「ごめん」
と、一言断った。
「えっ?」
次の瞬間、あたしのみぞおちに痛みが走り、あたしの視界は真っ暗になった。

朝。→←状況把握。



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海苔川ばなな - ニコさん» コメント遅くなってしまい申し訳ありません!読んで下さって有難う御座います!文章変かもしれないんですが、読んで下さると嬉しいです! (2018年6月26日 8時) (レス) id: a8889f40a6 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - すごく面白かったです!続き待ってます! (2018年6月25日 23時) (レス) id: 50ca3fafb3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海苔川ばなな | 作成日時:2018年6月25日 2時

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