【あんスタ】レンゲソウをあなたへ【鳴上】

訪れ ページ18

「あの…鳴上嵐さんいますか？」



アイドル科2年B組の教室に響いたのは、鍛え抜かれた中低音。


先日行われた演劇科六月公演でロミオを演じた、島崎優雅がそこにいた。


噂どおり可愛らしく整った顔に、教室が少し騒がしくなった。



「アタシに何か用かしら？島崎優雅ちゃんよね。場所変えましょうか」



頭一つほど小さい優雅の顔を見下ろして、嵐はにっこりと笑った。


かと思ったら、ゆっくりとどこかに歩き出す。


どこに行くのかという優雅の質問には答えず、ただ一箇所を目指した。


ついたのは、人気の少ない校舎の奥。



「で、何の用かしら？」



嵐が優雅を振り返りながら禍々しいほど綺麗な笑みを浮かべると、優雅は深呼吸をしてまっすぐに嵐の目をみた。



「…A先輩のこと、どう思ってますか？ただの友達として好きなら、A先輩のためにも離れて下さい」



先輩のためとはどういうことか。


嵐は、真っ先にそう聞きたかった。


でも、優雅の目がそれを許さない。


どう思っているのかだけが聞きたいと、その目は語る。



「…一言では言い表せないほど大切な子よ。あなたには譲れない」

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