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「元気に...生きろってさ」 ページ49

チクタクと、壊れかけヒビが入った時計が時間を刻む。
聞いているうちに、どんどん眠くなってきそうだ。

「...ねぇ」
「ん?」

携帯をいじっていた龍志はゆっくりと顔をあげて私を見る。
その瞳はまっすぐで、曇りなんてなくて。
格好いいな、といつも思ってしまうんだ。

「...お母さんと、会ったでしょ?」
「...!...なんでそう思う?」
「さっき、みんなが来る前に尋ねた時、言い辛そうにしてたでしょ?でも、テレビの中には何もなかったし、もしテレビに何か映っていたなら龍志は見せなかっただろうから」

だって龍志は優しいし、と付け加えると豆鉄砲食らったような顔をしてきた。
数秒後に「優しい?俺が?」と苦笑する。

「...会った。 お前の携帯を返してくるときに、お前ん家の郵便受けの前で」
「...ッ、どうだった?」
「俺の手元の携帯を見て、一発でバレた。 俺がお前のこと知ってるって」
「...は...」

乾いたような笑いが私の口から漏れる。
一気に脱力したような感覚がして、私の腕はだらりとベッドに放り出された。
しつこいまでに効いていた冷房で先ほどまでは掛け布団があったかかったのに、今では体が火照ってどうしようもないくらい熱い。
子供の頃からずっと同じだ。
お母さんには嘘をつけなかった。
そしてお母さんに嘘がバレた時はいつも、罪悪感と羞恥と恐怖で体が火照っていた。

「...それで、なんて?」
「...」

す、と私に携帯を渡された。
それは前から使っていた携帯とはまったく違う、最新機種のスマートフォン。

私の頭の中は困惑に満ちる。

「...遺書は読んだってさ...生きてるなら、次に会った時点での最新機種を贈るつもりだったらしい」
「...これ...」

真新しい携帯は私の手になじまず、機械らしい冷たくて固い感触が不自然だった。

「...お前はいつも、姉のお下がりだった...最近は服とか買ってやったけど、お前がいつも遠慮しているのは知ってた...携帯でさえお下がりでも、お前は喜んでた...だから、返された携帯を見たとき、お前だけの、新しい携帯を買うお金を渡された」

どくり、と自分の鼓動が大きく聞こえた。
肺あたりが淡く握りしめられているような、苦しみを覚えた。

お母さん...最後の最後まで私に優しくしやがって...

「...ほかは?」

そう尋ねた私の声は、どうしようもなく震えていた。
私がこんな、地球上最悪の親不孝なプランを思いついたせいでお母さんはどれだけ、...どれだけ

「元気に...生きろってさ」

――最後まで、ごめんは言えずに。→←「やってみな。私のお母さんも諦めたよ」



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作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:   
作成日時:2013年11月29日 22時

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