"俺の存在" ページ34
Side 宇城 龍志
思えば最初から俺は、クソなほど恵まれていた。
両親はカタギではなく、もとから世間的に言えばヤクザ、格好良く言えばマフィアという仕事をしていた。
両親はいつだって忙しそうだったし、殺しにかかってくる奴らは少なくなくて俺はいつも離れのほうにいた。
一応警察の上層部ともかかわりがあるのか、なかなかどうしてサツどもから手を出されることはなかった。
経営は主に賭博や密輸だとかのアンダーワールドソサエティばっかりだ。
まぁ平たく言えば、金に困ったことはないし、子供のころから戦い方を教わり、上に立つものとしての教養を受けてきた。
俺が今暴走族のようにチームを作ってたまり場に屯したり、他のチームに喧嘩を吹っ掛けられて抗争に応えたりしているのも、逆に両親から強く願われたことだ。
幼少から戦闘を学んできた俺は、自分でも誇れるほどになかなか喧嘩が強い。筋もいい。
空手、柔道、合気道、剣道、弓道、合気道、骨法、拳法、柔術…数えきれないほどの戦闘教育を受け、それらを組み合わせた俺だけの戦い方で、今のところ互角のほかは勝った覚えしかない。
なかなか面白い人生だが、同時になんだか足りなかった。
当たり前のように仲間と屯し、仲間と駄弁り、そしてまた一日が過ぎる。
時として、抗争することが俺を満たすこともあった。
空虚な頭の中を空っぽにして、何も考えずただ目の前の敵を倒せと、俺の中の獣が暴れる感覚が好きだった。
繰り返される毎日がつまらなくてつまらなくて、ただ手あたり次第に殴り喧嘩したい感情を抑えきれずにいた。
正直何が俺を突き動かしたのかわからない。
何故俺がこんなただの女のためにここまで時間を割いてやっているのか。
暇つぶしと言ってしまえばそれで終わりだが。
何かに惹かれたとしか言いようがなかった。
ただ何も感じずに同じ日々を繰り返す俺と違って、その女は抗っていた。
日常を変えようとする強い意志に、惹かれたのかもしれない。
そいつに、俺はどう映っているのだろうか。
まったくの初対面であり、暴走族のチームのトップという立場である俺に、ビビりもせず従いもせずただ流れるように接してきたやつは初めてだ。
興味本位、という言葉が一番正しいのだろうな、と思って自分で納得してしまった。
『もう、終わらせよう』
静かで、落ち着いて、だけど諦めたような声に、そろそろ頃合いだな、と俺は重い腰をあげた。
そしてペンライトを握りしめ、光を放った。
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年11月29日 22時