【閲覧注意←】パンドラダイアリー。【妄想オリジナル】

準備おっけー。 ページ12

「Aさん！」

このアメリカン インターでは聞きなれない日本語に、私は笑みを浮かべて振り返った。
そこにはやはり期待通りの姿。
命の恩人である私を軽く崇拝している雄人君が小走りでこっちに向かっていた。

「ごめんね、ちょっと手間取っちゃってまだ着替えてないんだ。」
「あ、大丈夫っすよ！こっちも門番でごたごたしてて、時間かかりそうですから。」
「…何をやらかしたの。」

私たちは肩を並べて高校の校舎へと足を向けた。
この学費だけ余分にとり、ろくに施設を改善しようとしない言葉通りくそな私立には、更衣室という更衣室がない。
そのため、体育などの授業は皆、トイレで着替えるのだ。

というわけで実際私たちは今トイレに向かっている。

別にこの先何らか卑猥なことはない。
にゃんにゃんはない。
フラグは立ってるけどまだまだにゃんにゃんはない。
まだ先だ。ただ着替えるだけだ。

「なんか流石に大人数だと門番が怪しんでるんですよ。俺らはここの卒業生とか転校してった仲間とかで誤魔化してるんですけど…」
「雄人君はよく抜け出せたね？」
「あぁ、俺は既に個人情報書いたので。残ってるのは、龍志さんとその他数人っす。他はもう勝手に歩き回ってます。」
「そこに私が紛れ込むわけか…バレない？」
「バレないと思いますよ？個人情報はAさんの分まで勝手に偽造したんで。」
「…本当私の学校のセキュリティちょろいわ。ちょろすぎて危ないわ。」

そんな無駄話を階段をのぼりながら話せば、女子トイレが目の前に見える。
じゃあ、と私は雄人君に声をかけた。
雄人君も了承の声をあげ、笑った。
とっても、なんというか人懐っこい笑み、だ。
弟に欲しい。

一人暮らしに旅立ってしまった姉のゴシックパンクファッションのシャツ、アウターとスカートを着ればもう一端の生徒には見えない。
この学校の所々に監視カメラがあるのは承知済みだが、女子トイレが設置されている3階には一つもないのは既に確認済みなので、誰も私の服装が変わったことに気づかないだろう。
他のカメラで見ても、「別の人かな」と思えるように髪型も変え、メイクも簡単にしてみた。
普段の私はメイクなんて大っ嫌いだからな。

完璧に容姿を変えたところでトイレを出れば、待っていた雄人君と鉢合わせになる。
雄人君は小さく歓声をあげ、全く別人にしか見えないと褒め言葉でしかない言葉を言ってくれる。

それに私は笑って応対し、先ほどのように肩を並べて歩いた。

準備おっけー。

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