王子様のお姫様【まふまふ】

20.憂鬱な時間の再び ページ20

正直言って、私は今日を楽しみにしていたのに、全然楽しくなかった。

皆が皆この三人を見て、私を見下す。
辛かった。



そしていつのまにか、天宮さんのことを毛嫌いしていた相川くんも響希さんが仲介となって三人でいるし、




まるで、一人おいていかれたような孤独感。孤立感。疎外感。
いつも、相川くんがそばにいるからと甘えていたのかもしれない。


私、普通になにもできないぼっちなんだなって。
魅力もなにもなくて、満足に遊びを楽しむことすらできない。

結局、いじめられていたときと何らかわりない。
いじめが終わっても、私の心はそのまま。


弱虫な自分も、
臆病な自分も、
我儘な自分も、


何も、終わってなんてなかった。





「そろそろ帰らない？日も暮れてきたし」




天宮さんの声で、皆の足は止まる。
もう外は夕方で、私の家に誰もいないからって帰らなければならない時間だった。

もう、終わりか。

思えば、長かったと思う。


でも、普段嫌だったジェットコースターも、バイキングも、いやな気持ちにさいなまれていたから平気だった。





良いのか、悪いのか、どっちなんだろう。





でも、言える。結論できる。
後者に決まっているのだ。

だって、ジェットコースターも、バイキングも、本当は怖いと思うのが、私にとって普通なのだ。

なのに今日は怖くなかった。
それはきっと、私が暗い気分だったからだ。





「そうだねー！わし、今日はめちゃめちゃ楽しかったよ！」

「いや、棗ちゃんははしゃぎすぎだったよ……」

「なんだとこのぉー！」


天宮さんと響希さんが夫婦漫才している……。
パチパチ、と瞬きをしても、じゃれあいは止まらない。

仲良いなあ、何て感じてしまうばかりだ。





そしていつの間にかあるいていたら、駅についていた。
心情って怖い。
人の感じる時間をあっさりと流してしまうのだから。





「あ、5分発の電車あったね！よかったぁ……」

「うわ、この電車逃したら一時間後じゃん！あぶねえ！」

「棗ちゃん、何で一時間後しかないんだろうね」

「いや知らんがな！」




どうやら五分発の電車に乗れるとのこと。
とりあえず、帰れそうだ。

切符を買って、電車が来るのを待つ。




…もうそろそろかな。
顔をあげると、その刹那誰かの影が私に差し出す。

え？
と振り返った隙には、相川くんの顔。
ニヤリと笑っていた顔。




「何かあったら、必ず僕を頼ってね」




耳元で囁いたその声は、私の目を開かせた。

21.愚者の鳴き声→←19.最後の惨め

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す