13 ページ13
『あ』
校門の前で、ピタリ、と自然に足が止まる。
私が目を見開いた先、そこには相川真冬が何食わぬ顔をして突っ立っていた。
「おはよう」
『お、おはよ……』
昨日のことが気まずくて、顔をそらしてしまう。
告白された。
それだけならまだよかった。
ファーストキス奪われて、危うく襲われかけて。私の純情がすべてなくなるところだったんだ。
そういえば、ドアはどうしたんだろう。
先生怒ってないかな。怒ってるよな。
「……そんなに昨日のことが心配なら、早く先生見つけよう」
『はっ……』
ぐいっ、と公共の場で手を引っ張られる。
その力は強くて、対抗するには相手から離してもらうしかなかった。
「言えないなら端から先生の様子をうかがえばいい」
『な、なに偉そうなこといって……』
「僕は君が怒られようが怒られまいがどうでもいいから」
『はっ、昨日私のことすきって……！』
好きなら、そんなこと言わない。
そういおうとしたが、彼は遮った。
「好きだよ」
「だからそんなどうでもいいことに君の心のスペース使いたくないんだよね」
彼のその冷たい瞳が、心なしか少し輝いて見えた。
認めたくない。認めたくないのに。
心のどこかで、彼の言葉に胸が高鳴っていた。
*********
「おー、山本と相川、手繋いでどうした？」
人の目がありながらも、担任のもとへとたどり着くことができた。
ニヤニヤとしながら聞かれたので、私はすぐに相川に捕まれていた手を離す。
『あっ、いやこれはっ！』
何か弁明を施そうとしたが、すぐにまた捕まった。それだけではない。恋人繋ぎもしてきた。
どうしても離さないのか。こいつは。
横目で見てみるも、表情は変わっていなかった。
「あー、そういや聞いてくれよ？
昨日きちんと片付いてるか体育館にいったら、体育館倉庫のドアが倒れてたんだよ」
先生はヘラヘラと笑いながら話すが、私は身体中に力が入った。
冷や汗が垂れて、私の手はじんわりと湿っていく。
「でもな？会議で体育倉庫狭いし老化が進んでるからリフォームしようってなって、
やっぱりドアも錆びてたりしただろ？取り外そうって工事の業者さんに頼んでたんだよ」
_____え？
心がだんだんと安堵の世界へ陥っていく。
「でもきれーに倒れててさ、マジでウケたわ！はっはっはっ！」
担任は上機嫌そうに笑った。
怒ってなかった。
なんだ……。
安堵によって、不意に力が抜けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 462人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2021年3月14日 1時) (
レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - リート@暫く浮上しません。さん» 返信が遅れてしまい申し訳ございません……！！ありがとうございます！そういっていただけてとても嬉しく思います！はい！だらだらします！()コメントありがとうございます！ (2019年11月9日 21時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
リート@暫く浮上しません。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最初から最後まで二回も見るくらい、面白い作品でした。羨ましい。ゆっくり休んで疲れを癒してくださいね。改めまして、完結おめでとうございます。 (2019年10月4日 7時) (レス) id: 5e7567a452 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» こちらこそいつもみていただきありがとうございます！！このお話、結構ストーリー凝っていたのでそういっていただけると頑張った甲斐があります！はい！是非楽しみにしていてくださいね！頑張ります！ (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 絆さん» こちらこそいつもありがとうございます！！あ、その心配はありませんよ！私、めちゃめちゃずぼらですので！！( ・`д・´)ご心配していただけて誠に嬉しく思います！ありがとうございます！！！！ (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
