39 ページ39
「ま、真冬！？」
「お前どうしてここに……！寝込んでるはずじゃ……！」
驚いたのは俺だけじゃない。
優も浦田くんも、目を丸くして声に出していた。
俺は真冬の姿をじっと見つめた。
赤い瞳に白い肌。微かに彼の息は切れていて、頬も赤い。無理をしてまでここに来たのだろう。……そして、
クローバーのブローチが、胸につけられていた。
これって、Aが……。
そう思っていると、彼は颯爽と俺たちのもとに向かってあるいていく。
「屋敷から抜け出しました。
僕は相川家の計らいで体術も身に付けているので大丈夫です」
「いやいや、ダメだろ！？」
「真冬、たしかにA様が大切なんはわかるんやけど……！」
ドアの前にピシッ、と彼はたつ。
ぎゅっ、とドアノブをつかんだ。
……そして、俺たちの方へと振り返り、
「___A様に汚い手で触れる輩がいると思うと、吐き気がしますから」
赤い瞳を光らせ、彼は告げた。
そんな姿に、俺も二人も唖然とする。
この中で一番衰弱しきってるからだで、彼はそう言ったのだ。独占欲。その言葉がお似合いなのかもしれない。
ゆっくり、ゆっくり。古い音をならして扉は開いた。そんな勇敢な姿をみて俺は苦笑いを浮かべる。
____こいつは、真冬は、やっぱりすごいや。
.
.
.
「___やっときた」
その瞬間、肌にまとわりつくような、男の声が聞こえた。
視界は真っ暗。扉は急に閉まり、完全に俺たちを包囲した。
そして、コツ、コツ、と前に出てくる黒い人物。
こいつが二人のうちの一人だ。きっと誘拐犯である。脈拍も何もかもがAと違う。先程の声も、彼からの言葉だろう。
彼はゆっくり、ゆっくりとフードをはずした。
紫色の髪は泳ぐように落ちていく。
白い肌。目元にはホクロが張られていた。
それに息を飲んだのは、俺と真冬ではなかった。
「_______え？」
「____おい、嘘だろ？」
優と浦田くんの心拍数が上昇している。
…それは、彼が現れてから。
……この彼と、二人は知り合いなのだろうか。
「___真冬さん？そらるさん？だっけ？初めまして。そして___」
「さかたん、うらさん、久し振りやね」
「俺は志麻。正真正銘、銘崎家のお嬢様を奪った張本人や」
にこっ、と彼は笑った。
気持ちの悪いくらい、不気味な笑顔で。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 778人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！結ばれたあとのお話が欲しいです！ (2020年1月15日 20時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - mokoさん» ありがたいです……！！！ですけど、きちんとお目目休めてくださいね！……ありがとうございます！！頑張ります！(Ｏﾟ皿ﾟＯ) (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 絆さん» はい！やから始まってので終わる鶯餡です！ありがとうございます！！！！私ハッピーエンド主義者なので、そこ思いが伝わっていましたらとても幸いです！はい！頑張ります！(返信遅れて誠に申し訳ございません……) (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
moko - 最初から最後まで１日で読みきってしまいましたww次の日学校なのにオールしましたwwすっごい面白かったです！これからも頑張ってください！応援しています♪ (2019年9月30日 5時) (レス) id: 711f63988a (このIDを非表示/違反報告)
絆 - やからはじまってので終わる鶯餡さん！！鶯餡さんの作品大好きです！！鶯餡さんの作品はどの作品を読んでいても心が暖かくなります！これからも楽しみにしています！無理はなさらないでください！ (2019年9月7日 19時) (レス) id: da343c4ed4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
