8話 ページ9
季節も夏に入ろうという頃、木の葉隠れの里で大きな祝い事が1つあった。
四代目火影の就任だ。
選ばれたのは、忍大戦で目覚ましい活躍を見せて英雄と謳われた波風ミナトだった。
新たな火影への期待と喜び、そして停戦による束の間の平穏も相まって里は祝いで賑わう。
「A!ほら、見えるってばね!?」
「ん!見えるからだいじょーぶっ、おとうさんカッコイイ」
「当たり前だわっ、世界一だものねー?」
「ん!」
人混みより少し離れた遠目に見える、火影の羽織と眩い金髪が見える。
Aを抱き上げて見せていたクシナの頬も髪に映えるほど喜びでほんのり紅潮していた。
人々の希望を一心に受けて、新たな里の代表として祝われる男が自分の夫である事が誇りだ。
そして、腕に抱く授かった愛娘も。
興奮気味に嬉しさを全面に表すクシナとは違い、父親の頷き癖がうつっているAの表情は父親寄りだった。
ミナトにそっくりだってば、と心中で呟きながらもそれが可愛くて仕方ない。
自分譲りの真っ赤な髪以外は夫に似た実に良く出来た娘だ。
「今日はご馳走にするってばね!お父さんとAの好きなもの尽くしにしちゃうわよ」
「ほんとっ!?わーいっ」
パァと顔を輝かせて万歳するAが可愛くて堪らず、「もうっ可愛すぎ!」と抱きしめて頬ずりする。
同じく嬉し笑みで応じるAとのやり取りは非常に微笑ましかった。
式典は祭りに続き、里は1日大いに賑わった。Aもクシナと共に里内の屋台や店を回って祭りを楽しんだ。
手を引かれて訪れた先々で食べ物を買ったり、的当てやゲームをしたりするのが楽しかった。
やがて日も暮れ始め、帰路につく頃には人混みもまばらな小道を選んだ。
クシナにしっかり手を引かれながら、夕日を見つつ「楽しかった!」と笑う。
それを眺めていたクシナがふと静かな笑みになってAに言った。
「でもこれからはお父さんの娘だって、あんまりしゃべっちゃ駄目よ?約束ね」
「ん!約束、ちゃんと守るからだいじょーぶ」
甘えた盛りの幼子にさせるには酷であろう内容なはずなのに、Aは素直に頷くからクシナが眉を下げて悲しそうにしてしまった。
途端にAも悲しそうにして、「おかあさん、だいじょーぶ?」と心配する。
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作者ホームページ:http://なし 作成日時:2017年6月17日 0時