43話 ページ44
ゴゴゴ!と背後に炎でも見える雰囲気と赤髪をうねらせて怒るは“赤い血潮のハバネロ”。
滝汗を浮かべてアワアワとしつつもクシナの怒りをこれ以上刺激しないようにと思うミナトの焦りも募る。
ぶっちゃけAの語る内容は、かつてクシナも散々嫌な思いをさせられた典型的なイジメなるものだが。
当のAは怒る母と焦る父も気にする事なく、甘い桃を幸せそうに頬張りながら笑った。
「ううん、遠目で心配そうに見てくれてたのがイズミちゃん!男子たちは私を囲んで笑うから、だから言ってやったの!」
「ぶん殴ってやったってば!?」
「クシナ落ち着いて!」
身を乗り出して問うクシナを片手で宥めるミナトを前に最後の桃も食べ終えたAはフォークを握って示す。
「お残しは許しませーん!!」
「え」
「へ?」
「って」
ポカンとした表情を浮かべる父と母に対し、言ったAもそんな返しを受けるとは思っていなかったらしくポカンとする。
互いが互いに予想外に拍子を抜けて首を傾げ合う様は傍から見たらきっと面白い光景であっただろう。
まさかの発言に怒りや焦りも同時に吹っ飛んだらしいミナトとクシナに首を傾げながら続けた。
「だってお母さんもいつも言ってるから、好き嫌いはいけませーん!って。トマトはいっぱい栄養あるんです、お残しは許しませーん!って怒った」
「そ、そうなの…」
「ッアハハ!それで、その子たちはどうしたんだい?」
「ちょっとミナト!なに笑ってるってばね!」
「トマトがどれだけ美味しいか語ったら、なんか微妙な顔して帰っちゃったなぁ…?」
それは世に言うシラけられたとか、呆れられたとか言うのだろう。
Aを取り囲んでいた男子たちが、嫌いな野菜(トマト)の魅力をキラキラとした顔で語られ説教させられてゲンナリしていく図を想像する。
同じ構図を思い浮かべて、耐え切れずに笑うミナトにクシナは顔を紅くして軽く怒る。
だが、その怒りから“赤い血潮のハバネロ”の雰囲気は消えていた。
「でも変な子たち!トマト美味しいのに」
「…はぁ…A、その子たちが言いたかったのはそうじゃないってば…その、真っ赤な髪を」
「?」
「母さん譲りでごめんね…その赤い髪をからかいたかったのよ、悪ガキ共は」
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作者ホームページ:http://なし 作成日時:2017年6月17日 0時