41話 ページ42
案内された庭の池で泳ぐ鯉の群れを眺め見ている時。
イタチが当然発した驚きの内容に思わず声を上げて振り向いてしまった。
「兄弟?」と身を乗り出して聞き返すと、いつもの冷静な表情が珍しくほんのりと紅みを帯びていた。
数日前に分かったばかりだと続けられて、出会った時を思い返して納得する。
ミコトとイタチが出てきた建物は木の葉病院だった。
「弟?妹?」
「母さんはまだ分からないって言ってたけど、オレは弟だと思ってる…」
根拠なんて何もないけれどと考えて、イタチは言ってしまった事に少し後悔した。
普段の自分ならそんな事は口走らないと自身で理解しているからこそ余計に意識してしまって。
咄嗟に笑われると考えて視線を逸らして黙ってしまうと、瞬いたAは案の定笑った。
しかし、紡がれた一言で別の笑いなのだとすぐに伝わって視線を戻す。
「弟だと良いね!」
弟が欲しい、そう思っていたのが伝わったかのように。
気恥ずかしさが素直に嬉しさへと変わって頷き返す。
ふわりと弧を描く微笑みは、Aだけが知れる優しいものだった。
「いつ生まれるの?」
「予定日は7月23日だって聞いた」
「夏だねっ!今から楽しみで待ちきれないよ、どんな子かな!?」
「…きっと凄く可愛い、かな」
万歳で喜びを表現するAは本当に嬉しそうだ、まるで自分の事のように。
それが無性に嬉しく、イタチが答える内容も浮かべる微笑みも嬉しさが前面に出ていた。
「そっかぁ、イタチ、お兄ちゃんになるんだ。生まれたら見に来ても良い?一緒に遊んでも良い?」
「うん…いや」
「!」
「オレが連れて遊びに行くよ、Aの所に」
絶対に、としっかりと約束してくれるイタチの発言にAは返しを忘れてしまっていた。
それほど嬉しかったからだ、頬を紅潮させて浮かべたのは満面の笑み。
「ん!」
「約束だ」
2人が無邪気に交わした最初の約束だった。
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作者ホームページ:http://なし 作成日時:2017年6月17日 0時