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36話 ページ37

ぐっと片手を伸ばしてピースを決めてとびきりの笑顔。
吹いた風に揺れたユリと長い紅い髪色が重なって墓石のリンの名に重なった。
勢いに押されて言葉を失っていたのに、息を吐いて肩の力を抜くのは呆れからだった。

「Aちゃんから聞けるならリンも喜ぶな…」
「?、違うよカカシ兄」

言いたい事も言えず迷ってしまう自分よりは無邪気に思うままを口走るAがいて良かったなと。
その方がリンも喜んでいるだろうと静かに返せば、見上げてきたAの表情からは笑みが消えていた。
真っ直ぐ真剣な表情に一瞬ぞわりとする。
この表情はあの、見透かすようなものだと分かるから。

「カカシ兄が来てくれるから、リン姉は喜ぶんだよ」

「だってリン姉はカカシ兄もオビト兄も、お父さんもずっと大好きだもの」と、はっきりと告げる。
あまりに当然という言い様に、年上として取り繕う否定すら出来なくて唖然となってしまった。
同時に握られていた手がパッと離されて、ニパッと笑みを向けられた。

「あ!あっちにも誰かいる!」
「!、ちょ…!」

立ち上がって遠目で誰かを見つけたらしい。
興味がそちらへ移ってしまったらしく、「1人で遠くへ行っちゃ駄目だぞ!」と叫ぶ間に既に遠くなっていた。
風で揺れる明るい赤い髪が陽を受けて目に焼き付く。
溜息をついたカカシがふと掌へ視線を戻して気がついた。

「…ホント、不思議な子だよな。リン」

声を掛けても墓石は答えないと知っていても、風で揺れるユリの花が肯定しているように見える。
穏やかさを宿して細めた瞳が向く掌、どす黒い紅はもう見えなかった。



墓地の合間で佇んでキョロキョロと周囲を見渡して首を傾げている小さな子が見える。
目立つ明るい赤い髪を鳥居の影から遠目で見つめていた存在はクスリと笑んで呟いた。

「さすがうずまき一族の子ね、綺麗な赤髪だわ」

女口調であっても声色の低さはどう聞いても男性のものだ。
そのまま鳥居の向こうに鬱蒼と茂る木々へ話し掛ける。
正確には木の枝から見える片足にだ。
ブラブラと遊ばせるように揺れていた足が止まり、クッと小さく笑って答えた。

「あの歳で飛雷神まで使うってさ」
「!…それは本当かしら」
「アンタ好きだろ?ああいう『天才』」

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作者ホームページ:http://なし  作成日時:2017年6月17日 0時

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