30話 ページ31
流石に駆け上る先は一つしかないため、イタチの目的が分からずに声を上げた。
だが先を登る返しは答えをくれず、一気にスピードを上げて最後の一歩を踏み出す。
間を開けずにAも力を入れて身を上へと動かした時、目に飛び込んだ景色に動きを止めてしまった。
晴れた空と陽光を受けて風が吹き抜ける。
木の葉を風に舞わせて広がる立派な街並みと火影岩を抱く崖まで見渡せる全ては、名の如く木の葉の里そのものだ。
「わぁ…!」と、一望できる風景の素晴らしさに目を輝かせて呟く横顔に、立ち並んで眺めていたイタチが小さく笑った。
その音でパチパチと瞬いてようやく、あ、と気がつき振り向く。
イタチがしたかった寄り道がようやく分かった、この風景を見せてくれるためだ。
「とってもキレイ!崖じゃないのにこんな風に里見られるトコはじめて!」
「前に教えて貰ったから、そのお返し」
以前、火影岩のある崖上で一番見晴らしの良い場所へ案内した事があった。
里が一番綺麗に見える、Aにとってお気に入りの秘密の場所。
イタチなら、と教えたそこから見える景色と同じくらいココは見晴らしが良かった。
お返しの意味が嬉しくて「ありがとう!」と発した声色は思うより明るく弾んでいた。
「元気出たみたいで良かった」
「!」
ポツリとイタチが紡いだ言葉が最初は理解できずにいたが、すぐにピンときて「ん!」と返した。
その顔に浮かぶ笑顔はいつも知っている無邪気で明るく元気なもの。
だからイタチもそれ以上何も聞かなかった。
そうしてしばらく、風に吹かれながら2人で里の風景を眺め続けていた。
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作者ホームページ:http://なし 作成日時:2017年6月17日 0時