鏡花のような花うちはイタチ (ページ25)

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24話ページ25

その夜は、火影と里の上層部を中心として有力一族の長たちを交えた重要な会議が開かれていた。
会議も長引く夜の間、一息を入れようと休憩を挟んだ折の頃合いだった。
火影執務室にAが飛雷神で飛んだのは。

「っ？…おとうさんっ、いない…」

誰もいない灯りの落ちた暗がりにパッと降り立ったAは素早くあたりを見渡して父を探す。
しかし見渡しただけでも明らかに誰もいないと分かる執務室で眉を下げて目の前の術式クナイを見た。
窓から差し込む月明かりだけが室内を仄かに照らす内、棚に置かれているのは父が常時置いているものだ。
ミナトが火影に就任したばかりの頃、こっそりと連れてきてもらった火影の部屋。

―ほら、見てごらんA。ここからも里がよく見えるんだ。父さんが護り支える場所が、ね？

みんなには内緒だぞ、と自分を抱き抱えて火影の椅子に座りながら悪戯っぽく笑った父の表情。
それは晴天のように暖かくどこまでも大きな木の葉を照らす陽に見えた。
エヘヘと膝の中で見上げて笑い返した光景が、昼から夜の今へと戻る。

(おとうさん…！どこ！？…ッ、チャクラの気！)

バッと顔を上げて、焦った表情と思考はAが意識するよりも先に身体が動いていた。
ほとんど無意識化で気配を闇に溶け込ませ、全身の感覚を研ぎ澄ませる。
ただ思うは、父を探す、という一心で。

焦る気持ちと荒くなる息に反して、細めた瞳は視界の闇夜でなく感覚で覚える視界を捉えていた。
実際に目で見えているわけではない、直近に感じるチャクラの気配を探り当てる事だ。
イタチとも何度か試した、かくれんぼに似ているかもしれないと思った。
覚えている父のチャクラの気配…Aには金に輝く陽の光に感じられるそれを辿るように探る。
そうして、消え霞む後を辿った先に感じた大きなチャクラが集まる場所の方向を定めるや否や、弾かれるように駆け出した。