19話 ページ20
袋を受け取ったまま言い放つフガクの言葉は嘘も取り繕いもない。
厳しいままに告げられた内容に返しを止めたイタチを見ていたAはフガクも交互に見やって瞬いた。
それからいきなり「じゃあ、ありがとうございますだね!」と大きな声で代わりに返す。
「!」と一瞬反応したフガクを見上げたままニパッと笑んで続けた。
「イタチのおとうさんたちが木の葉まもってくれるから平和!だから、ありがとうございます!」
「A…」
「平和だとみんな笑い合えるからうれしいんだよ?ね!」
一緒にいられるから仲良くだってなれる、と手でガッツポーズを作って謎の意気込みを見せる様子に。
フガクはしばし無言だったが、ふと「そういう事もあるな」とゆっくり返した。
その表情は苦笑であれど初めて緩んでおり、イタチも目を丸くする。
反らず見上げていた明るい表情は、イタチへと振り向いて「ね!」と向けられた。
コクリと頷きで返されたやり取りを見やっていたフガクだったが、次に返す前に会話は中断された。
「隊長!任務の知らせが入ってます!」
「分かった。悪いが話はここまでだ」
警務部隊の建物から発された声に手を上げて返して、イタチとAに向き直り別れを告げる。
「うん、また家で」と頷いたイタチと「ん!さようなら!」と手を振るAを背に身を翻した。
後ろで幼い声の会話が小さく聞こえる中、歩いている内に追いついてきた横から小声で耳打ちがあった。
一族の若者である部下の1人だ。
「あの子供は、波風ミナトの」
「だろう、間違いなくな。それに、きちんと四代目とお呼びしろ」
「良いんですか?四代目の子とご子息が!」
「構わん、子供たちに境界はないだろう」
ですが!と、不満を前面に表す若者の声を諌めると反論は無くなる。
離れても尚、納得いかないという気持ちを浮かべるのは若者が一族に誇りを持ち、フガクを慕っているからだ。
ミナトが四代目に選ばれた時、うちは一族の中で不満の炎を燃やした一派の1人だった。
当時、一族を宥める事に苦心したのを思い出し溜息をつく。
そして先ほどのやり取りとイタチを思って。
(波風A、か…)
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作者ホームページ:http://なし 作成日時:2017年6月17日 0時