鏡花のような花うちはイタチ (ページ11)

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10話ページ11

「Aちゃん、大きくなったな。今いくつだ？」
「4つ！こないだお誕生日だったよ！」
「そりゃ祝い損ねたな…そうだ、コレやるよ」
「わぁ！わんちゃん！」

んー、と考える仕草をしていたカカシが持っていた包みから取り出したのは小さな犬のぬいぐるみだった。
「！？」とまさかの取り出しにクシナはびっくりしていたが、受け取ったAは嬉しそうに礼を言う。

「それ何だってばね…！？忍犬のぬいぐるみ？」
「任務で使えないかと用意したんですが、やっぱり使い道がなかったので」
「どういう任務だったの！？」

カカシほどの才能を持つ忍なら任されるのは上級任務ばかりなはずだが。
うーん、と悩むクシナのツッコミには答えず、Aを見下ろしているカカシは少年に似合わない暗い空気を背負っている。
Aの頭から手を離すと、「じゃ、俺はまだ任務残っているので失礼します」と言ってさっさと踵を返してしまった。
その背を見送りながらAは「またねっ！」と手を振りつつぬいぐるみを抱きしめる。
そうして、ふと1つの影である事に小さく呟いた。

「1つ…」
「！…、そうね…前は3つ、ううん。ミナトも併せて4つだったものね…」

傍にあるクシナだけが意を拾って同じく眉を下げる。
かつて同じように度々見送った事のある背中は大が1つ、小が3つの立派な班だった。
バランスのとれた良いチームでもあったからこそ、過酷な戦場への任務にも見送れた。
今や1つになってしまい、１２～３歳には不釣り合いな暗さと悲しさを負う背が時の流れと戦の無情さを痛感させる。
ん、とぬいぐるみを抱くAは顔を上げてクシナの手を掴んだ。

「でも、わたしとおとうさん、おかあさん一緒だったら4つだよ！」
「…そうだってばね！」

あとー、と知り合いの数を指折りし出すAに小さく笑ってクシナが同じく手を握り返した。
そうして帰路に戻りながら、幼い娘の考えを汲む。
そうだ、失ってしまったものも大きいけれど全てが失われたわけではない。
離れてしまっても、また一緒になれるようにすればいい。

「今度、一緒にお昼にでも誘おうか！」
「うん！にぃーとお昼！」

片手を上げて返事をして喜ぶAの手に夕日が影を作った。