中島敦の親友 (ページ3)

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親友１人ページ3

『敦、大丈夫？』

そう云って覗き込んできたAに、「大丈夫だよ」と返す。
正直な所、かなり空腹だったため、全く大丈夫では無かったが。
それはAも同じだろうし、要らない心配はかけまいと敢えて口に出さなかった。

『やっぱり、服よりも食料先に買った方がよかったよね…。』

僕の考えていることを察したのか、自らの服を摘まみながらそんなことを呟いた。
それを聞いて、申し訳ない気持ちになる。

……孤児院を出て、さ迷う様に町から街へ渡り歩き、7日が経った。
孤児院に現れた虎は……今も孤児院の畑を漁っているのだろうか、とふと思った。

まあ、以前この話をAにしたら、冷たく「別に、アイツらなんてどうだっていいでしょ」と言われてしまったのだが。やはりどんなに印象は悪くとも、彼らが怪我をしていないといいなと願った。

Aからしてみれば、孤児院も虎もどうでもいいのだろう。
彼女が見据えているのは今日の食事と明日の寝床。過去に引きずられている自分とは全く違う。

『敦、アンタまたくだらないこと考えてるでしょ。』

ぴしゃりと放たれた言葉に、肩が揺れる。

…本当に彼女には敵わない。

「Aはさ。別に僕と一緒に来なくても。いや、来ない方が良かったんじゃかいかと思って……。」

『……どうして？』

Aが息を飲んだのを感じて、俯いたまま言葉を続ける。

「だって孤児院の人とも仲が悪かった訳じゃないし…。仕事だって……。」

そう、仕事だってあったのだ。
Aが僕と同じ境遇ならば良かったのだが(同じ目に逢っていたら、何て考えたくもないが)、Aはあの町でも上手くやっていたし、これからもやっていけていたであろう。

それを、奪ってしまった様に感じてならないのだ。どうしても。

『…私はね。いた居場所に、いたい人と一緒にい過ごしたい。』

『今の生活は楽じゃないけど、それでも。』

後悔はないよ。

諭すような優しい声に、思わず涙が出たのは彼女には内緒だ。