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『お待たせしました』
本当に空が暗くなるまで待っていた一彩くんは、私の声を聞いてぱっと顔を上げた。彼の座っていた席にはすでに空になったグラスが置かれている。
「もう終わったんだね。もっと長いと思っていたんだけど……」
めちゃくちゃ長かったはずなのに、あっけらかんとしてそう言う一彩くんが不思議でならない。私だったらこんなに待たされればすぐ家に帰りたくなるものだけど。
『これ漫画です。返す時も同じ袋に入れてくださいね』
「ありがとう!すぐに読んで返すよ!」
『ゆっくりでいいんですよ。よかったら感想も教えてください、話したいですし』
私は重くてたまらなかった漫画の袋を、一彩くんは軽々と持っている。
カフェの会計を済ませ、一緒に店を出た。
『一彩くん、ひとつ聞いてもいいですか?』
「ウム。僕のことならなんでも聞いて欲しいよ!」
『じゃあ、一昨日は帰ってくれたのにどうして今日は待っていたんですか?あ、先に言っておきますけど迷惑だったとかじゃないですから……!』
ブンブンと手を振って、困らせてしまったかなとか言われないよう先回りする。
一彩くんは顎に手を当てて考え込むような姿勢になった。
「一昨日Aに言われて帰った後に、やっぱりもう少し一緒にいたかったと思ってね。だから今日は待ったんだよ。だから今、Aといれてすごく嬉しいよ!」
『は……』
「…………A?顔が赤いけど、もしかして熱でもあるのか!?気付けなくてごめん!今日はもう帰った方がいいよ!」
『いや違っ、……すいません、慣れてなくて…………その、私も、一彩くんといれてうれしい、です』
一彩くんの言葉にきっとそれ以上の意味がないことは分かっている。だけど、私の返事はこれで正しかったのだろうか。
不安になって、チラリと一瞬、一瞬だけでいいから一彩くんの顔を確認しようとしたけど。
なんて嬉しそうに笑っているんだろう。私の言葉でこんなに顔をほころばせるだなんて想像もしなかった。
心臓が勝手に早鐘を打つ。いやいやいや、違う、これは本当に違う。
「どこまで送ればいいかな?本当はAの家まで送ってあげたいんだけど、その後一人で帰れる気がしなくて……」
『あっ改札!改札のとこまでで大丈夫です!』
改札を通って一彩くんと別れる。お互いの姿が見えなくなるまで全力で手を振る彼を見ていたら、いつの間にかドキドキも収まっていた。
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ねむ - 一彩くん推しなので終始ドキドキが止まりませんでした...♡最高な物語をありがとうございます😭 (2023年2月26日 22時) (レス) @page15 id: a6f4e7ce9f (このIDを非表示/違反報告)
朱桜馨 - 主人公ちゃんとひいろが可愛い… (2020年9月17日 15時) (レス) id: 3526ff08b8 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - りんさん» りんさんコメントありがとうございます!今日ちょうどこはくくんの新作を公開したのでよければそちらも読んでくださると嬉しいです^^ (2020年5月21日 22時) (レス) id: 29281c3049 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 初コメです♪クレビpなのですが一彩君にハマりそうな勢いです…!!時間に余裕あればクレビのこはくでもぜひお願いしたいです*° (2020年5月21日 14時) (レス) id: 385319c63b (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 水無月さん» 最後まで応援して下さりありがとうございます。水無月さんには何度もコメいただき、とても嬉しかったです!こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました^^ (2020年3月30日 11時) (レス) id: 29281c3049 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2020年1月30日 0時