検索窓
今日:17 hit、昨日:4 hit、合計:6,831 hit

第103話 落ちる ページ8





『これで全部かな』


入院中に使ったタオルや歯ブラシなどカバンに詰め込む。といってもそんなに荷物はない。
数日間お世話になった新井先生に、お礼を告げてから帰ろうと病室を出る。待合室には誰もいない。




(あ、月詠さんにも電話しなきゃ)




“家まで送るから、診療所を出る時電話して”
と彼女に言われていた事を思い出す。


携帯を取り出し、月詠さんの名前を選択してボタンを押す。数コールしたが、結局月詠さんは出なかった。忙しいのだろう。



私が誰かに狙われていなきゃ、月詠さんの負担になることもないのに……



深くため息をつきながら、私はこれまでのことを振り返っていた。
多分、ことの始まりはそよ姫様が攫われた祭りの日。
あぁ、そうだ。あの時も彼に助けられた。



『神威さん……』



私の名前を呼んでくれた声を今でも思い出して、胸が苦しくなる。


その後、吉原にいる4人の女性が襲われる。みんな私に似たような人ばかり。おそらく偶然じゃない。


そう思ってた矢先に、雅が何者かに襲われる。
代わりに店に出たあの時、部屋に連れ込まれたことを思い出す。
あの襲ってきた男の人の力が強くて、身動きなんてとれなくて、神威さんが来てくれなかったら、どうなっていたか。



そして、日輪さんが襲われた。あの時野次馬の中にいたんだ。私を狙ってる人物が。



“お前のせいだ”



憎しみと、どこかあざ笑うような声。まるで私が傷つくのが面白いみたいな。
晴太くんの涙に濡れた顔。日輪さんが目の前で倒れてるのはお前のせいなのだと。



あの夢。
夢なのに、鮮明で今も思い出す。みんなから向けられる冷たい視線。針のように浴びせられる言葉。



逃げ出した私は雨の中、歌舞伎町にいて、古い神社で神威さんに会った。




“ 俺の手が怖い? “




あの時の神威さんの苦しそうな瞳。傷ついたような表情。
彼はこうなることが分かっていたのかもしれない。




いつか、私が拒絶すると。
あなたの手を振りはらう時がくることを。






『だから、あんな表情……』





私はなんてことをしたのだろう。
銀時さんの言う通り、分からないことを聞けばよかったんだ。



自分が神威さんの本当の心を知るのが怖くて、彼の言葉に耳を傾けようともせず、ただ拒絶だけして。



自分が傷つきたくないからって。

第104話 意識の中で→←第102話 調査2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
158人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 神威 , 吉原   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

月夜の光(プロフ) - SARAさん» コメントありがとうございます!遅くなり申し訳ありません!読んでくれて嬉しいです!カメ更新ですが、よろしくお願いします! (1月8日 20時) (レス) id: 26850a1960 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 寝子/猫さん» コメントありがとうございます!!遅くなり申し訳ありません!うぶな神威くんの行き着く先を一緒に見守ってください! (1月8日 20時) (レス) id: 26850a1960 (このIDを非表示/違反報告)
SARA(プロフ) - 1日で読み終わっちゃいました!大好きです♡更新またあるといいなあ… (10月1日 16時) (レス) @page5 id: 000b3a28d3 (このIDを非表示/違反報告)
寝子/猫 - 恋にうぶなかむいくん尊い (8月26日 1時) (レス) @page5 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月夜の光 | 作成日時:2023年8月6日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。