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残酷な赤、灰色の僕 ページ2

線香が、

雨水で消えないよう慎重にあげ、

彼女と同じように顔の前で手を合わせる。



「毎月来てるの? 」



不意をつかれたように、

後ろにいるAから間抜けた声が聞こえる。


彼女はうん、と一言静かに答えた。




『……一松くん、私ね、

自分でも思った以上に依存してたの』



Aは恥ずかしげに苦笑し、ボストンバッグを握り締める。




依存?
それは兄さんの方じゃないか?




立ち上がり、紺色の傘を持ち直す。

傘の端からポタポタと雨が流れ落ちた。




『おそ松くんね、よく場所も構わず、

私に好きって大声で言ったり、

大袈裟にスキンシップしてきたの』




……知ってる。


話せばAの話題しか、

おそ松兄さんからは出てこないほど。


それを僕は仕方なくうんうんと聞いてあげて、

でもどこかで自分の知らない彼女を知れて、

嬉しくもあった。




『愛されてるんだ私、って居心地良くて。

どこかに優越を感じていた。


この人には私が居なきゃダメなんだって』



現にそうだったよ。


2日会えないだけで目に見えるくらい、

おそ松兄さんはショック受けてたし、

会ったら会ったで、

兄弟でも引くくらいAにベッタリ。



そんな事をさせられるのは、彼女くらいだと思っていた。



『でも、

依存してたのはおそ松くんじゃなくて私。


あの人がいなくなってから、


世界が灰色になっちゃった』




大粒の雨が彼女の澄んだ瞳からも流れる。




この空のように、

目の前にいる僕も、

彼女の瞳には灰色に映っているのだろうか。






どうして、僕じゃダメなんだろう




同じ顔で同じ血が流れているのに




どうして兄さんじゃなきゃダメなんだろう




抱きしめたい




でもそれはルール違反な気がするから





だから、僕は__




『えっ……』




こうして、

彼女の小さな頭を撫でることしか出来ない。

残酷な赤、灰色の僕→←残酷な赤、灰色の僕 *一松



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月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» 林檎麻様、更新が遅くなって本当に申し訳ありません! お気に召したらいいなと思っております> < (2016年9月20日 0時) (レス) id: d3821ecd4f (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - 月夜の光さん» うわあぁあぁ返信ありがとうございます!!!こちらこそ本当にありがとうございます!! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 6ae5345221 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» いつもありがとうございます!リクエストもとても嬉しいです!期待に沿えるよう頑張ります!! (2016年8月18日 20時) (レス) id: 882257e3d8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - カラ松とツンデレ妹夢主ちゃんの絡み合いが見たいです!!(笑)いつも怪我ばっかりしている次男の身体を見て、ちょっと心配する夢主ちゃん…みたいのです…分かりづらくてごめんなさい…!! (2016年8月17日 22時) (レス) id: 6ae5345221 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» コメント本当にありがたいです!一松が一番好きなので、どうしても一松ばっかりになってしまいます笑笑 新作も見て頂きありがとうございます!そちらは全然更新出来てませんね…なのでそっちも頑張ります!いつもありがとうございます!! (2016年7月3日 9時) (レス) id: 882257e3d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月夜の光 | 作成日時:2016年3月17日 0時

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